73.ヌマチチブ

73.ヌマチチブ

ハゼ科

Tridentiger brevispinis

【全長】

15cm

【生息地】

北海道~九州、壱岐、対馬。中流域を中心として上流から汽水域までの、転石の多い清流で多く見られる。

【体】

いわゆるハゼ体形。頭は丸く口は大きい。体色は濃淡のある褐色地、小白色斑が散在。

オスは、体全体が黒ずみ白色斑は青みがかる。さらに、第1背鰭が伸び、トゲも倍近く突き出てくる。

【生態】

産卵は春~夏。転石の裏側に産み付けられる。卵をオスが孵化するまで守る。孵化した仔魚は一旦海に流下。翌春には全長3~4㎝に成長し鮎の稚魚の群れとともに川を遡上してくる。

両側回遊だが、容易に陸封される。

【食性】

雑食で主に付着藻類を食べる。

【味】

四万十川では好んで食用されるが、食用されない地域は食べられるという認識がない。

白身で肉質も味も良い。

四万十川では佃煮や卵とじで食べられる。

岩城食堂のゴリ丼

チチブとヌマチチブ

よく似ているチチブとヌマチチブである。見分けるのはかなり難しい。

・ヌマチチブは、第1背鰭の基底から離れた上方位置に暗赤色縦帯が見られる。チチブには見られない。

・ヌマチチブには、胸鰭基部薄茶色の横帯があり、その中に途切れたりしている橙色線が見える。チチブニは見られない。

上記のように区別できるが、個体によってはその特徴が見えにくい。

四万十川の「がらびき漁」

四万十川では、ヌマチチブの稚魚を獲る漁がある。

四万十川では、ハゼの総称を「ゴリ」「チチコ」などと呼ぶことがある。地域によって微妙に特定の魚をさすこともある。

「がらびき」「のぼり落としうえ漁」はヌマチチブなどの「ゴリ」を狙う漁法だ。

昔は専業漁家で幅広く行われていたが、現在はほとんど行われていない。

・「がらびき」

約50~100mのロープにサザエなどの貝殻を何百個も吊り下げた漁具をゴリのいそうな場所に投入し、2人1組で上流から下流に向かって川底をひき、貝殻が立てる「ガラガラ」という音に驚いたゴリを下流に設置した四ツ手網に追い込むという方法。

四万十川では下流域でしか行えない漁法で、春の風物詩として親しまれていた。

干潮から満潮になる上げ潮の時に行われる。

・「のぼり落としうえ漁」

川の浅瀬に砂利や石で土手を作り、そこにすのこなどを立て、遡上するゴリの侵入を阻む。するとゴリは壁に沿うように横へ横へと移動していき、土手の端に仕掛けられたかごに自ら入ったものを獲る方法。

≪参考資料≫

・日本の淡水魚 山と渓谷社

・四万十川の魚図鑑 いかだ社

・くらべてわかる淡水魚 山と渓谷社

・日本の淡水魚 山と渓谷社

・四万十川の伝統漁 四万十市観光協会