四万十川流域の厳選100種

四万十川流域には季節ごとに美しい花が咲いています。
年間を通じて考えると、その数は数百種類を越えるのです。
そんなたくさんの花の中から、是非皆さんに見ていただきたい厳選100種類をご紹介します。
すべて、今年になってから咲いたものです。時期的にまだのものは、また改めてご紹介します。

No.61 チダケサシ

四万十川流域では四万十町(自生)のみに見られます。ユキノシタ科の植物で同じ仲間のアワモリショウマ、アカショウマとは、花、葉の形がよく似ます。例年なら、ピンク色で染まるくらい一面に花が咲くのですが、今年は、ことのほか降雨日数、降水量が少なく、土壌が乾燥していて、開花していたのは2個体だけでした。学(属)名のアスチルベと同じ名前の園芸植物が花屋さんなどで売られています。(2013年7月21日撮影、四万十町)

No.62 ヤマアジサイ(アジサイ)

冷涼な渓流沿い、林縁などに生えます。花弁に見えるのは「がく」で、4枚の「がく」は、花ではなく、装飾花と呼ばれます。中心部のイルミネーションのような部分が花になります。園芸用に栽培されるアジサイは装飾花に覆われて、花が見えません。山に生えるアジサイの美しさに感動して、野生のアジサイのとりこになる人も少なくありません。(2013年7月7日撮影、高知県梼原町)

No.63 コオニユリ

沿海地から標高1500m程度の高山まで広く分布します。葉腋にはムカゴがつきません。一方、オニユリは栽培品種が逸出したもので、人家、水田周辺だけに見られます。葉腋にはムカゴが付きます。(2013年7月13日撮影、高知県四万十市)

No.64 ササユリ

名は葉が笹に似ることによります。名前ばかりでなくミャコザサが生えるような山地草原に生えます。更に、七夕の頃、満開になります。花があると、遠くからでも良い香りが漂ってきます。花姿、芳香共に、気品が感じられます。(2013年7月6~7日撮影、高知県梼原町)

No.65 ノカンゾウ(ヤマカンゾウ)

四万十川流域には花が一重のノカンゾウ、八重のヤブカンゾウがあり、いずれも人里、里山に生えますが、ヤブカンゾウの方がはるかに多く見られます。学(属)名はヘメロカリスと言い、ギリシャ語で「一日の美」という意味です。花が一日でしぼんでしまうことによります。ただし花は次々と咲くので、長い期間、観賞することができます。(2013年7月21日撮影、四万十町)

No.66 ヒメユリ

山地草原に生え、7月下旬から8月中旬にかけて、開花します。太平洋戦争中、大半が犠牲になった沖縄の女学生からなる「ひめゆり部隊」の語源になった花です。そのために、花そのものは赤く色鮮やかな花ですが、哀愁を感じます。凄惨を極めた沖縄地上戦、硫黄島の戦い、そして開花期が広島長崎原爆投下の日、終戦の日と重なります。あの戦争の惨禍を忘れないよう、繰り返さないよう、平和のシンボルとして、毎年、ヒメユリの花は咲き続けています。(2013年7月27日撮影、高知県梼原町)

No.67オミナエシ(オトコエシ)

古来、「秋の七草」として親しまれてきた植物。以前は、四万十川沿いの土手や棚田の周囲などでも見られましたが、今では、標高の高い山地草原を除いて、ほとんど姿を消してしまっています。棚田の耕作放棄に加えて、ほ場整備が絶滅に追いやり、四万十川の景観を変えてしまいました。ススキ(尾花)と共にオミナエシの咲く景観は、いにしえを偲ばせます。(2013年8月18日撮影、高知県梼原町)

No.68 コシンジュガヤ

水湿地に極めて稀に生える一年草。全体に小さく他の草と混じって、なかなか目につきにくい植物でもあります。そのため、写真は超近接撮影しています。花は地味ですが、実になると名前のとおり真珠のようになり、はっとさせられます。

No.69 アキノキリンソウ

秋の高原に多い植物。草丈30~80cm程度で、総状に、黄色い花をたくさんつけます。名は、秋に咲くキリンソウの意ですが、キリンソウはベンケイソウ科、本種はキク科で全く異なる植物です。この植物は、かつて20年くらい前には、沿海地、里山など、どこにでも見られました。現在では、かなり標高の高い所までいかないと、見られなくなっています。

(2013年9月14日撮影、高知県梼原町)

No.70 キオン

名は、シオン(紫苑)に似て、花が黄色いことによります。四万十川では、標高1000m以上の高原に生えますが、四国では西南部にしか分布していないため、四万十市西土佐黒尊~愛媛県宇和島市にかけての黒尊(鬼が城)山系だけに見られます。花、生育環境共に秋咲きのエーデルワイスと呼ぶにふさわしい高貴な雰囲気があります。(2013年9月7日撮影、高知県四万十市)

No.71 ノジギク(ノギク、タイキンギク)

沿海部の湿潤地に生えますが、土壌の乾燥化と共に、自生地、個体数が急速に減少しています。海浜砂地に生えるネコノシタの仲間で、同様に葉は猫の舌のような、ざらざらした感触があります。端正な形をしており、園芸花のように見えます。(2013年5月25日、黒潮町)

No.72ハバヤマボクチ

日当たりのよい乾燥した山地草原に生えます。高さ50~100cmになり、根生葉(根元の葉)は三角形で、ほこ形に張り出し、触ると、ごわごわした感じがします。総苞(花を包んでいる部分)は栗のイガのようでクモ毛が多く、同様な感触があります。花は褐色で地味ですが、全体に個性的な植物であり、結構、人気のある植物です。(2013年9月22日撮影、高知県梼原町、津野町)

No.73 ヒメゴタイ

山地草原に生える2年草(開花、結実後、枯死する。種子でしか繁殖できない)。ロゼット及び下部の葉は羽状に深裂しますが、上部では披針形になります。花と共に総苞片(花を覆っている部分)は重なりあって、蛍光的な紫色をしています。また雌しべの柱頭(先端)が、Tの字になります。花はまるで宝石のアメジストのようです。(2013年9月21日撮影、高知県梼原町、9月23日撮影、高知県四万十市)

No.74 オオクサボタン

四国では四万十川流域だけに分布し、牧野富太郎博士によって、四万十市麻生(四万十川支流、後川沿い)で発見され世に知られることになった、四万十川の代表的な植物。葉がボタンに似ることから、この名がありますが、クリスマスの頃の園芸花、クレマチス(Clematis)と同じ仲間で、また草ではなく、落葉小低木になります。花の色は普通、紫ですが、茜色のものも見られます。花後の実も白髭(写真)のようになって、よく目に付きます。牧野富太郎発見の地(国道439号沿い)が、今年、道路法面工事により絶滅したことに、県内の植物研究家の間では大変悔やまれています。(2013年10月19日撮影、高知県四万十市)

No.75 サラシナショウマ(オオバショウマ)

四万十川流域では四万十町辺りから標高1000m程度の山地まで広く見られます。林縁、林内にはえ、冷涼な所になるほど個体が大きくなる傾向があります。花の部分をかじられている個体が多かったので、地元の人に聞いたところ、鹿が食べた跡とのこと。鹿もグルメになっているようです。

No.76 シコクブシ(レイジンソウ)

四国に産するトリカブトで、標高1000m以上の山地では、林縁、渓流沿い、山地草原、岩石地、いたるところに生えています。日向では茎は直立しますが、日蔭では垂れ下がるようになります。誤食すると命に係わる猛毒植物ではありますが、秋の山で、紫~青紫色、まれに白に近い色をした独特な形の美しい花を咲かせます。(2013年9月21日撮影、高知県梼原町、2013年9月22日撮影、高知県津野町)

No.77 カリガネソウ

美しい青色と独特な形の花が、印象的な植物。四万十川での自生地は少なく、上流域から源流域にかけての沢沿いなど、幾分、湿った場所に点々と見られます。以前は下流域の水田周囲でも見られましたが、近年では高温乾燥化の影響もあり、絶滅しています。花とは対照的に葉には悪臭があり、気分のすぐれない時は、嗅がない方が良いでしょう。(2013年9月14日撮影、愛媛県西予市)

No.78 アキチョウジ

深山の水路、渓流沿い、林縁など、半日陰の湿った場所に見られます。よく群生して、満開時には、ハーブのセージを思わせます。葉の両面には、やわらかな毛が生え、葉の基部がやや赤味を帯びます。(2013年9月15日撮影、愛媛県西予市)

No.79 キバナアキギリ

かなり陰湿な林下、林縁に生え、標高のやや高い冷涼な場所で見られます。学(属)名は、Salvia nipponica(サルビア・ニッポニカ)で、つまり日本に自生するサルビアになります。葉は3角状ほこ形で、基部は左右に張り出します。サルビアの名は、ラテン語の「salvare(治療)」 、「salveo(健康)」に由来し、この仲間の多くに薬効があることに因みます。(2013年9月22日撮影、高知県梼原町)

No.80 シモバシラ

常緑では無いので、冬期、地上部は枯死しますが、枯れた茎にも水を吸い上げる力があって、根元に霜柱ができます。それが、そのまま名前になっています。鹿の忌避植物のため、自生地では大群落を成しています。(2013年9月7日撮影、高知県四万十市)

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