四万十川の百名花

四万十川流域の厳選100種

四万十川流域には季節ごとに美しい花が咲いています。
年間を通じて考えると、その数は数百種類を越えるのです。
そんなたくさんの花の中から、是非皆さんに見ていただきたい厳選100種類をご紹介します。
すべて、今年になってから咲いたものです。時期的にまだのものは、また改めてご紹介します。

No.1 イナモリソウ(サツマイモ)

地面に貼りつくように生える丈の低い植物。種は異なりますが、秋に咲くチャ ボホトギスに似た生え方をします。花は桜に似たピンク色で、同様な風情が感 じられます。里山と高山との中間的なレベルの山地に見られますが、四万十川 流域での自生地は多くありません。(2013 年5月 26 日、四万十市)

No.2 コンロンソウ(ナノハナ)

渓流沿いに生え、よく群生します。花は白ですが、雰囲気はアブラナによく似 ます。アブラナ畑は人里の象徴ですが、本種が一面に咲くと、まさに渓流沿い のアブラナ畑です。(2013 年6月2日撮影、高知県梼原町)

No.3 イチリンソウ

名は一茎に一輪の花をつけることによります。同じ仲間のニリンソウより、花、 葉共に大きく、群生することはほとんどありません。学(属)名は、アネモネ。 花が終わって、初夏には地上部は全て姿を消します。(2013 年5月3日撮影、 梼原町)

No.4 ニリンソウ

名は一茎に二輪の花をつけることによります。ただし、二輪の花は時期がやや ずれて咲きます。長野県上高地の代表花で、早春、林床を白い花が一面に覆い ます。冷涼な渓流沿いの林に多いですが、梼原町では、山地草原、水田の周囲、 人家の庭先など、いたるところに生えています。白く清楚なイメージ、二輪の から、恋人や新婚のカップルに贈る花(2013 年5月3日撮影、梼原町)

No.5 バイカオウレン(ウメ)

高知県出身の植物学者、牧野富太郎が最も好んだ花として、よく知られています。名は花が梅に似ることに因ります。四万十川では四万十市~四万十町の各所に自生または群生して、純白の花は季節的に残雪を思わせます

No.6 クサノオウ

名の由来については、茎や葉を折ると黄色い汁が出ることから「草の黄」とす るものから、諸説あります。四万十川流域ではヤマブキが上流部にしかないた め、下流部では本種がヤマブキに一番似た花を咲かせます。全草にモルヒネ様 の毒を含んでおり、作家の尾崎紅葉がガンの末期に服 用していたことが知られています。(2013 年3月 31 日撮影、四万十市)

No.7 マムシグサ

深山の林縁、林内に生え、仏炎苞(筒のような花)の先端が長く伸びる特徴が あり、個体によっては象の鼻のようになるものもあります。写真のものは、そ の特徴があまり良くでていません。暗い林の中で、花はエメラルド色に輝いて いるようであり、まるでランプのようです。(2013 年6月1日撮影、梼原町)

No.8 マイヅルテンナンショウ

名は、葉を鶴が羽ばたく形に見立てたもの。テンナンショウの仲間では、高さが1mほどにもなる大型の植物。河畔林、特にエノキ林に多く見られます。本種は保護重点種に指定されており、許可なく採取すると50万円以下の罰金が課せられます。(2013年5月26日、四万十市)

No.9 オウギカズラ

深山に生え、茎は匍匐して地上を這い(カズラ)、茎の節からところどころ根を下ろして株を形成し、グランド・カバー状になります。学(属)名のアジュガと同名の園芸品種(西洋ジュウニヒトエ)があって、花や生え方もよく似ます。同じようなところにラショウモンカズラも生えますが、四万十川流域では本種の方が希少です。(2013年5月3日撮影、高知県梼原町)

No.10 オドリコソウ

桜色の花は自生在来種の中では観賞価値が高く、市街地や公園などの美化に活用するのも良いと思います。一方で、人里という環境の減少と共に、数が少なくなっており、自生地の保護も必要です。四万十川流域全体から見ると分布域が狭いですが、四万十の春を代表する美しい花の一種です。(2013年4月13日撮影、四万十市)

No.11 ラショウモンカズラ

秩父層(四万十川流域では、梼原町、津野町)に沿って分布します。自生地では雑草のごとく生えていますが、それ以外の場所には全くありません。花は長さ4~5cmもあって大きく、色鮮やかな花なので、遠くからでもよく目立ちます。(2013年5月3日撮影、梼原町)

No.12 アオイスミレ

四万十川流域では20数種の野生のスミレが見られ、その中で最も早く開花するスミレ。自生地は少なく、四万十市、四万十町に点々と見られる程度です。山地性のスミレで、名は葉がフタバアオイの葉に似ることによります。(2013年3月16日撮影、四万十市)

No.13 アカネスミレ

四万十川流域では、やや標高の高い山地草原や岩石地で見られます。普通のスミレの花に対して赤紫色をしていることから、この名前があります。名と共に、茜色の可憐なスミレ。(2013年4月22日撮影、梼原町)

No.14 アリアケスミレ

湿った場所に多く、四万十市のトンボ自然公園では、春を代表するスミレになっています。野生のスミレの中では洒落た雰囲気があります。四万十川流域で見られるスミレの中では、花の美しい品種で、数が少ないゆえに、それが魅力にもなっています。(2013年4月13日撮影、四万十市)

No.15 シコクスミレ

そはやき植物(中国大陸と陸続きだった頃の植物で同一種、または近縁種が現存する原始的な植物。本州の東海以西、紀伊半島、四国、九州の太平洋側だけに分布)の一種。葉はハート形で縁には鋸歯があって、地下茎でよく増えます。鹿の食害の影響か、以前と比べて土壌の乾燥化、花つきが悪いなど、自生地の環境が悪化しているように思われます。(2013年4月28日撮影、愛媛県宇和島市)

No.16 シハイスミレ

四万十川では里山から標高1000mを超える山地まで広く見られます。数ある野生スミレの中で、牧野富太郎博士が最も好んだ種として知られています。葉の裏が紫であるこから「紫背」の名があります。近年、次第に分布域が標高の高い場所へ推移しているように思われます。

No.17 ニオイタチツボスミレ

花の外側の紫と中心部の白色とのコントラストの強いスミレで、野生のスミレの中では、美しい花を咲かせます。名前のとおり花には芳香があって、一度体験すれば、ほとんどの人が好きになると思います。希少種ではありませんが、かといってどこにでもないところに、また魅力があります。地上茎の有るスミレ。 (2013年3月31日撮影、四万十市)

No.18 エイザンスミレ(ヒゴスミレ)

深い切れ込みのある葉が特徴で、このタイプで四万十川流域に分布するのは、本種とヒゴスミレの2種だけです。ヒゴスミレの方は花が白く、切れ込んだ葉の幅が細いことから区別できます。名は京都の比叡山(学名:Viola eizanensis)に多いことに由来し、標高1000m級の山地で見られます。(2013年5月3、4日撮影、梼原町)

No.19 ヒトリシズカ(フタリシズカ)

石灰岩地に顕著に多く見られる傾向があります。名は、花の姿を源義経の側室、静御前の側室に見立てたもの。正月飾りなどに使われるセンリョウの仲間で、光沢のある4枚の葉が偽輪生(2枚ずつの葉がわずかにずれて対生)します。(2013年5月5日撮影、梼原町)

No.20 フジツツジ(オンツツジ)

四万十川流域の里山では早春、ピンク色の花が咲くフジツツジがあり、方言で、「メンツツジ」と呼んでいます。これに対して、派手な色の花、葉と共に大きい本種をメン(女)に対して、オン(男)に例えたもの。幅の大きな3小葉からなり、花だけでなく、新緑や黄葉もなかなか見映えがします。(2013年5月6日撮影、四万十市)

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