四万十川、このままで良いのか
四万十川は、1983年のNHKの番組で「日本最後の清流」として紹介され、あっという間に全国に名前が知れ渡った。以後、四万十川の自然に憧れて、多くの観光客が訪れるようになった。
しかし、胸を張って今の四万十川に来てほしいと言えるだろうか。今の四万十川を多くの人に見てもらいたいだろうか。
鮎が減った。
川が汚い。
魚がいなくなった。
四万十川の何かが大きく変化しているようだ。まずは、その変化を捉え、四万十川の環境を少しでも良くしていきたい。流域の関係者は様々な取り組みを考えている。この想いをもって動き始めた取り組みが「砂利投入検証(仮名)」である。
漁師の声をきいた組合長
それは、四万十川西部漁業協同組合(以下 西部漁協)から始まる。
2020年は四万十川漁業協同組合連合会(四万十川漁連)の4単協(下流漁協・中央漁協・西部漁協・東部漁協)の役員交代の年であったが、新型コロナウイルス感染拡大のため総会の開催ができなかった。そこで、西部漁協では集落ごとに小さい単位で説明会と意見聴取会を開催した。当財団も現場の声を集めるため、その座談会に参加させてもらった。
座談会以前から組合員からは、現在の四万十川について様々な声が上がっていた。特に意見が多かったのは上流からの石の供給がなく、細かい粒子によって河床が目詰まりを起こし、生物の棲みかや砂利の移動もおこらないということだ。
この座談会では、金谷組合長から、それならば砂利を投入してみてはどうかという提案を組合員に行ったのであった。
その提案について
「川を人間の手でせつくな。また、おかしなことになる。」
「砂利がないのは明らかなことだ。どうなるかわからないがやってみたらいい。」
様々な意見が上がったが、賛成意見が多かった。誰もが、今の四万十川に危機感を抱いているのだった。
砂利投入に向けた動きが始まる
金谷氏は西部漁協組合長として、四万十川関係の会議で砂利投入について話を始め、行政関係者、各漁協関係者にも少しずつ理解と同意を得ていった。当財団も、この座談会がきっかけとなり、一緒になって砂利投入に向けて作戦会議を行うようになった。
砂利投入に向けてスタート
2021年1月、漁協関係者と四万十川に関わる行政関係者が集まる会で、金谷組合長は砂利投入計画の推進を提案した。そこで、了承が得られ、体制が決定することになった。
スタート地点に立てた。
この計画の目的は、四万十川の環境改善に向けて試験的に砂利を投入して効果をみることにある。効果が認められれば面的に広げていき、悪ければ別の方法を考えていく。
2021年2月、正式に、河川管理者である高知県に対して砂利投入の要望書を提出する流れとなった。四万十川の環境改善、ひいては漁業資源による振興が目的ではあるが、土木事業に関わるため。土木部と水産振興部への提出を検討した。目標は今年中に1回目の砂利の投入を行うこと。変化を追うためには事前調査の必要があるが、これについての予算を組んでいる組織がないので、当財団の事業の中で高知工業高等専門学校 教授 岡田将治先生に協力を要請した。
2021年3月
岡田先生と研究室の協力を得て、四万十川のモニタリングを開始した。(詳しくはこちら)
高知県に砂利投入の要望書提出
2021年4月、要望書提出に向けて内容を整理し、30日に高知県土木部と水産振興部へ要望書を提出した。
そして現在とこれから
高知県へ要望書を提出し、意識の共有もおこなった。砂利投入には、治水面や他の自然環境への負荷など懸念事項もあり、現在高知県と慎重に協議を進めているところだ。流域住民への周知と理解も広めていく必要もある。投入の詳しい方法や場所についても現在慎重に検討中。
まだ動き始めたばかりの計画だが、行政と漁協が力を合わせて四万十川を良くしていきたいという動きができた。これは、非常に大きな一歩だ。当財団も縁の下の力持ちとして力を尽くしていきたいと思う。