各集落の座談会へ
経緯
2020年は四万十川も新型コロナウイルスの影響で様々ことが制限された。流域の漁協でも総会の開催が見送られた。その中で、四万十川西部漁協は組合員の意見を直接聞きたいという組合長の意向で、集落ごとに小規模の座談会を開いた。私たち四万十川財団も、川に関わる当事者の意見を聞ける機会ということで、座談会に出席させてもらった。全座談会の参加はできなかったが、計7回の座談会に出席した。
川底の問題に注目
今回の座談会のメインの話は、「川底の砂利をどうするか」。
金谷組合長は、川に対して要望はないかと組合員へ聞きとりを行っていた。その中で一番問題になっていたのが、川底だった。魚に必要な砂利の減少と細かい砂の堆積によって、石が目詰まりしている、また、上流からの石の供給がないという問題。
この問題を解決しなければいけないと、組合長は積極的に動き始めていた。川底の状態を撮影し、ドローンで川の地形を撮影。減ってしまった砂利を改善するには、上流から来ない砂利を投入してはどうかという案を考え、様々な会合で意見を上げ、行政へも相談を持ち掛けていた。
この座談会では、それまでに得た情報や考察を組合員に説明し、意見をもらおうとしていた。座談会では、川底の砂利に対する意見だけではなく、漁協のこれからや、川全体の変化まで多様な話題が上がった。
集落ごとに川に対する意識はそれぞれ違い、新鮮な意見を聞くことができた。一部を紹介しよう。
岩間地区 2020年7月13日
参加者:組合長、理事2名、組合員7名
●四万十川の環境改善に向けた砂利の投入について ・砂利は入れないといけないのか? ・上流から石が来ない ・砂利がなくて川底が低くなった ・全体が下がったが、川がやせている。 ・今、砂防堰堤を超えている。止めきれない。 ・河原がなくなっている。 ・岩間は2mくらい下がったと思う。
●若手組合員の減少
黒尊地区 2020年7月17日
参加者:組合長、理事2名、組合員11名
・大雨が降った後に砂利の変化があるものだが、平成17年ごろから川の変化がなく なった。土砂が堆積していて、小砂利が増えている。山の荒廃が原因ではないか? ・黒尊川と本流の合流点の堆積。1mの水深がなくなってきた。冬場は渡れるところ が多く、堆積後は流れがなくなった。 ・玖木の沈下橋、昔は中洲に柳の木があり、水温が高いと鮎が木陰にいた。今は集 中豪雨がすごくて泥濁りの激流になる。放流の鮎はへばってのぼらない。 ・玖木の堰を崩してから鮎が獲れなくなった。岩と陰が多い。鮎が溜まらない。最 近はハヤ、イダ、ドンコもおらん。平成17年の豪雨で何もかもいなくなった。 ・営林署があったときより生活排水がなくなって川はきれいになったけど、鮎がお らんくなった。山の荒廃による陰と小砂利が増えた。昔は、天然遡上の鮎で太いの が釣れていた。 ・鰻は穴が埋まっていなくなった。 ・黒尊川の者は自家用を獲るだけで市場に卸さない。 ・黒尊川は流れが速すぎて網はできない。 ・黒尊川にヨシがなくなった。
奈路地区 2020年7月20日
参加者:組合長、理事2名、組合員6名
・このままではいけんくなる。四万十川の汚れを除去するのは簡単じゃない。四万 十川には動きがないから、みんなが動けばいい結果になるのではないか。 ・宮地が浸かってしまう。河積はどうするのか?泥をのけて、大きい岩を入れるな ら良いと思う。入れ方次第。上流から。大水の時に石が川に入るように。 ・砂利をそのまま入れるのではなくて、大水の時に流れるように入れたらいい。下 流で砂利が流れないところと上流へ入れたらどうか。 ・生まれた時には砂利を取る人たちがいて40年近く砂利を取っていた。それを埋め ると言ったらとてもじゃないけど相当な時間がかかる。川は何mも下がっている。 小さい時は河原でソフトボールしてたけど、今は草ばっかり。 ・広見川の入口をきれいにしないといけない。 ・エビが9月から禁漁だが、それをされると鰻の餌がない。乱獲の防止のためだ が、それは川が汚れているからエビが生まれない。生活をしているからこの汚れは 止められない。獲れるときは毎年同じように獲れていた。その生活は変わっていな い。 ・ダム放流:宮地は特にダム放流すると浸かるから、いつ出るか教えてくれないと 困ると区長が言い続けて、2年目でいつ聞いても電話で教えてくれるようになっ た。でも、まだ放流量に疑問があるときがあるから、もっと精度を上げて勉強して ほしい。
橘地区 2020年7月21日
参加者:組合長、副組合長、組合員11名
・この辺りは昔は広い農地だったが、それがなくなった。鹿が増えてハチクが枯れ たり、木の根を掘るから増水の時に下流へ流される。 ・川の形は、洪水で砂利が動いて戻ってしまうから、重機を入れた改良工事をして も意味がない。今は、川の形が落ち着いているから、下手な工事でいじくるのは災 害を起こす。 ・川をせっつくことに反対。砂防ダムが砂利を抑えているのが問題。自然に逆らっ たらだめだ。机の上でやっても意味がない。地元の川を知った人にしっかり意見を 聞くべき。 ・そこの大橋を作る工事で川の流れが変わった。火振り漁の流れも変わってしまっ た。竹藪もなくなって。川をせついたら大変なことになる。何十年も住んでいるが 河原が変わって直らなくなってきた。 ・建設の排水の汚れがある。鮎が獲れてた場所が獲れなくなってきた。魚が死んで しまう。微妙なバランスで成り立っているのに、そんな汚れを流したら死んでしま うわ。 ・広見川の濁りは1番大事な時に濁る。数回ならと思うが立て続けに濁る。 ・河床がやせたのは確実。若い時に泳いでいた時とは全く違う。 ・河床は1.5mくらい下がった。だからと言って、底上げすると、民家が水に浸かっ てしまう。川を「きれい」にするのではなく、四万十川にたくさんの生物を残すよ うにしてほしい。見た目のイメージだけになっているのはおかしい。水質は良く なっているが、ハヤンボがいなくなった。エサがない。
中組地区 2020年7月27日
参加者:組合長、監事、組合員8名
・林業が道を抜いて赤土を掘って表面の水が流れてくる。大規模林業が川を汚して いる。
本村地区 2020年7月29日
参加者:組合長、副組合長、組合員10名
・川の濁りは川の砂利がなくなったこと。前に砂利があったところに砂利がなく なって砂地になっている。全く砂利がない。大水が出るとヘドロになっている。 ・川の汚れ。砂利も砂も売られていった。広見川が許せない。鮎が一番のぼるとき に汚している。みんなが濁りを流しているわけではないけど。広見川を何とかして ほしい。 ・巨石が砕かれて砂利になるのに、自然の巨石が出てこない。水を浄化して、漁に も大事な玉石がない。生物は、砂地に住むナマズ、カマツカ、スッポンが多くなっ てきた。砂防ダムからあまりにも軽いものが流れてくる。
藤の川地区 2020年7月30日
参加者:組合長、副組合長、組合員9名
・木が茂って川の両サイドに陰りがある。 ・年によって鮎の漁獲量が極端に違う。藤の川の魚が減ってきた。子どもも遊べていた が、川が危険な場所になっている。人工林ばかりで広葉樹が減った。エサになるプランクトンや虫がいない。魚が棲めない。 ・昔は台風が来ると、大きな石が流れる音がした。いろんなものが流れて川が混ざるから魚の棲みかがあった。今は、大水が来ると住みかもなく、流されてしまう。できるだけ自然に流れる形にしたらどうか。 ・昔は、川エビがたくさんいたが、今は、巨石もなく河床低下。川の水に光が当たらず良いコケがない。できるだけ岩や石を投入すべき。ダムの溜まった石を流してほしい。 ・業者が入り、大々的にヨシを取っているところもあるが、藤の川はヨシが溜まっていて、取り除いて、川の淀みをなくしてほしい。 ・鮎を放流しても藤の川に鮎が止まらない。何かの汚れ?何かが妨げている。よい方法はないのか。 ・四万十川の砂利が堆積している。昔はとっていたが、今は川が狭くなっている。 ・鮎を放流しても鮎がいない。どういうことだ。 ・家庭排水だが、浄化槽の設置は市の補助がある。漁協もあと押しするべきだ。