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今月の清流通信は四万十町窪川の街中でゲストハウスを営む石井創(はじめ)さんをご紹介します。
四万十に来たきっかけ
石井さんは東京都葛飾区出身で、四万十に来たのは28歳の時。それまで東京でサーバーメンテナンスの会社に勤めながら、仲間とともにHP作成を請け負うグループを作るなど、web系の仕事をしていた。
「その頃から、なんとなく都会で働くのが自分の性に合っていないような気がしていて。ちょうどその頃が地方の衰退が叫ばれるようになった時で、地域おこしや地方創生の話が聞こえるようになってたんですよ。そこから地方に興味を持つようになっていろいろ調べていたんですが、地方は都会に比べて情報発信力が弱いのではと思い、web系の仕事なら可能性があると考えたんです。四万十川っていう名前は知ってるけど、観光地として盛り上がっている印象がなくて、四万十川を活かした観光産業を作ることで地域おこしに繋げられるのではないかと思って、四万十町の地域おこし協力隊に応募したんです。」
そんな思いで四万十にやってきた石井さん。地域おこし協力隊になってからは、「四万十町内を循環する観光づくり」というミッションのもと、3年間活動した。イベントの手伝いや、奥四万十博の情報発信のサポートなど、町内全域でたくさんの人達と連携しながらこれまでに培ってきたwebの知識も活かしつつ四万十町の観光促進に携わってきた。
「1年目はとにかく顔を覚えてもらおうと思って、イベントがあれば顔を出してましたね。2年目が奥四万十博が開催されたときで、事務局と協力して運営のサポートをしてました。3年目は卒業後に向けて、ミッションも遂行しながら起業の準備を進めていました。今やっている活動のきっかけに出会ったのもその頃です。協力隊での活動は完全に今の僕のベースになっています。」
4足のわらじ
3年前に協力隊を卒業した後も四万十町に残り、当初の目的であった四万十町の活性化のため日々活動をしている石井さんだが、もはや何屋かわからないくらい、私たちもいろんなところでお世話になっている。
「地域おこしを考えたときに2つのジャンルがあると思っていて、1つは文化的な振興、そしてもう1つは経済的な活性化です。僕はどちらかというと経済を活性化させることで地域おこしに繋げたいと当初から思っていました。そこで、協力隊時代に培った経験も活かしながら、イベントや商品開発を通してお金を生んで地域に還元させていくことで活性化につなげられるよう、地域の人たちと協力してイベントを企画したり、観光商品づくりに取り組んでみたり、ゲストハウスを開業したり、いろんなことを始めています。」
今石井さんやっていることは主に4つ。1つ目はイベントの企画だ。新型コロナウイルスの影響で残念ながら中止になってしまったものもあるが、自身のゲストハウスで開く小さなイベントから昔から地域で親しまれている大きなイベントまで様々なイベントに携わっている。
「基本は人と話しながら生まれたイベントが多いですね。やってみたら面白そうだなってことを実際にやってみるんです。商品化の1歩手前みたいな意味合いもあって、イベントでモデル的に実施してみて商品としてどうなのかを確かめることもあります。」
なかでも筆者が興味を持ったのは昨年開催を予定していた「ひとくちフェス」だ。窪川にお酒をメインにしたイベントがないという話から企画したイベントで、地元のお酒とおつまみを食べ比べ、飲み比べできるというとても魅力的なイベントだった。地元からの反響も大きく、私も含めたくさんの人が楽しみにしていたが、新型コロナウイルス感染拡大により無念にも中止となってしまった。その他、地元の青年団と一緒になって毎年恒例の夏祭りイベントや商店街を盛り上げる取り組みなども企画しているほか、農家と組んだイベントなど、町内のいろんな人達と関わってイベントを企画しているそうだ。
2つ目はweb関係の仕事で、主にいろんな団体のHP作成・管理を請け負っている。前職の経験をフルに生かして、町内のさまざまな団体の情報発信の手助けをしており、かくいう四万十川財団も石井さんにHPの管理をお願いしている。またプログラミングが小学校の必修科目に加わったことを受けて、町主催でプログラミング教室が開かれるようになり、そのお手伝いもするようになった。当初目を付けていた地方でのwebの可能性が、現実となってきているのだ。
さらに、石井さんはゲストハウス「sou. Town Hostel」の経営もしている。「地域の情報拠点となるようなゲストハウス」をテーマに昨年3月にオープン。かつてパン屋さんだった洋風の建物をゲストハウスに改修、内装もほとんどは石井さん自らDIYしたこだわりようだ。
1F共有スペース 2Fドミトリー 入口 外観
「ゲストハウスというと日本家屋を改装したものが多いから、そうじゃないのが面白いと思い、ペンションやロッジをイメージしました。窪川駅のすぐ目の前にあり、観光客の方にも立ち寄ってもらいやすい立地なので、四万十観光の情報拠点になれたらいいなと考え、パンフレットなどもたくさん置いてます。」
四万十中央ICからも近く、駅の目の前に立地しているということもあって、サイクリングやランナーの利用、近くには四国遍路札所岩本寺もあるためお遍路のお客さんも多いのだとか。
「四万十って意外とサイクリングやランナーの人が多いんですよ。都会には“ランステ”と言ってランナー向けの拠点って結構あって、四万十でもそういうスポーツを楽しみに来た方たちの拠点になることはできるのかなと考えてます。」
1階は共有スペース、2階が客室となっており、共有スペースは宿泊者以外もコワーキングスペースとして利用可能。取材に訪れた日もノマドワーカーが利用していた。夜になるとお客さんや仲間と宴会したり、ただのゲストハウスの枠にはまらない、地域の大切な交流の場にもなっているようだ。
最後に4つ目の活動だが、石井さんはまちづくり団体STEPを組織し、現在は自然体験型観光商品の開発・販売を行っている。町内4軒の宿泊施設で構成し、体験を教える人、宿を提供する人と役割を分担させることで、受け入れ側の負担を減らしながら、よりよい観光体験をお客さんに提供できる仕組みだ。
始まったきっかけは、協力隊3年目の頃、民宿かわせみを営む吉良さんに出会ったことだった。
民宿かわせみのご主人 吉良文雄さん 体験の様子 火振り漁の様子
「協力隊3年目の時に吉良さんと関わるようになって、ここで観光をやるなら吉良さんのスタイルは絶対必須だと思い、吉良さんの体験メニューを整理してネットで商品として売れるようにしていこうと考えたのが始まりでした。」
吉良さんはベテランの漁師であり猟師。民宿のお客さんに自身が獲った山の幸、川の幸を振る舞ったり、釣りを教えたり、四万十らしい体験を提供する。そんな吉良さんのスタイルは観光商品としてもっと活かせる。だからこそ吉良さんがこれまでお客さんたちに提供してきたメニューを基にした、川遊びや魚釣りの他、アユの火振り漁、ウナギのコロバシ漁などなかなかできない体験が商品となっている。
「吉良さんも高齢になってきているので、吉良さんに教わりながら自分たちも引き継いでいけるようにしなきゃなと思ってます。漁はなかなか難しいですけどね。」
人をおこして地域をおこす
イベントの企画運営にweb関係、ゲストハウスの運営に団体事務と4足のわらじ状態の石井さん。最初は一つ一つ動かしていくことに精一杯だったが、今は少しずつ余裕が出てきたという。そんななか、石井さんには今後もう一つやりたいことがあるそうだ。
「先ほど話した通り、僕はお金を回すことで経済的に地域を活性化させることを目標としています。でも最近、少しその考え方も変わってきて、人を育てることで地域の活性化につなげたいとも考えるようになってきました。イベントでも今までは自分が企画してやっていたけれど、今は協力隊等新しく入ってきた子たちがやってみたいと思ったことを手伝うというスタイルに変わってきていて、自分はようやく自立してできるようになってきた分、次は他の人たちのお手伝いをしていきたいなと思っています。地域を元気にする人おこしができれば、それが地域おこしになるのではないかと思うので、今後はそんなこともやっていきたいですね。」
四万十町に来て6年。まだまだやりたいことはあるのだという。本当にいろんなことに取り組んでいる石井さんだが、「四万十町を活性化させたい」という想いは最初からブレない。そのブレないアツい想いこそが彼の原動力なのだろう。四万十には彼のように若くアツい人たちがたくさんいる。これは四万十の財産だ。これからもそんな人たちを清流通信を通して読者のみなさんに紹介しながら、彼らとともに四万十を盛り上げていきたいと思う。
↓窪川駅から徒歩30秒!四万十観光の拠点としてぜひぜひご利用ください!!
sou. Town Hostel
住所:高岡郡四万十町琴平町15-20 TEL:090-4970-4717
料金:素泊まり3,400円 お部屋:ドミトリー(6人部屋)
(お食事は近くの美味しい居酒屋さんや、喫茶店を紹介してくれます。)
チェックイン:15時から チェックアウト:10時まで
定休日:お盆、年末年始
設備:キッチン、トイレ、シャワー、洗濯機、乾燥機、エアコン