砂防ダム変遷

砂防という考え方ができたのは、明治以降。明治維新の産業革命によって、各地で植林事業が展開していく。自然の破壊が無秩序に行われ始め、人命を守るために法整備が必要になり明治30年頃「治水三法(河川法、砂防法、森林法)」が制定された。昭和には、様々な災害発生をきっかけに砂防三法(砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地の崩壊による災害防止法)も制定され始めた。さらに、平成に入ると重機等を使用した大規模開発が行われ、ハードだけでなくソフト面の対策が必要となりハードとソフトが一体となった土砂災害防止法が整備された。砂防とは「斜面の土砂崩れを防止し、土砂災害から人の命や暮らしを守るために行われる工事や仕事」である。その考えを基に、今の砂防事業が進められている。

砂防ダムの種類

 砂防ダムには大きく3つの種類がある。不透過型、部分透過型、透過型だ。それぞれメリットデメリットがあるが、現在ほとんどが不透過型で、昭和52年(1977年)以前に作られた。

 不透過型の砂防ダムは、底面から水通し部までコンクリートで固められ、貯砂量部分が満砂するまでは土砂を下流に流さない型式である。メリットは、背面に土砂が堆積することで渓床幅が広がり出水時の流速を落とすことができるため被害軽減を期待できること。デメリットは、堰堤高が透過型に比べて高くなるため工事費が高くなること、落差が発生するため渓流環境を分断してしまうことだ。

 透過型の砂防ダムは、平常時は自然に水が流下し、出水時に無害な土砂を流下させる型式である。メリットは、堰堤の高さの全てが調節容量となるため、堰堤高を抑えられ、渓流環境を分断しないので連続性を維持できること。デメリットは、出水時、上流に透過部を閉塞する部材がないと土砂が下流へ流出する危険があることだ。

 部分透過型の砂防ダムは不透過型砂防ダムの水通し部から下側に部分的に透過部を設けたものだ。

砂防ダムの建設期間と費用

 砂防ダムの建設期間は、住民の要望から事業採択に1年。規模や形状の決定等の計画策定に1年、地元調整や土地買収など手続きに1年を要し、建設着手まで概ね3年かかる。さらに、進入路が必要な場合は作業道整備などにも時間がかかる。規模によって異なるが、例えば四万十町大正に作られている砂防ダムは平成25年に着工し現時点で完成に至っていない。

 建設にかかる費用は、下図のような砂防ダムの場合、1基約1億円。そのほか土地買収、進入路整備等に費用がかかる。

いろいろな砂防ダム

四万十町七里の砂防ダム 
四万十町七里の砂防ダム 上流
貯水機能を持つ砂防ダム①
貯水機能を持つ砂防ダム②
貯水機能を持つ砂防ダム② 上流
貯水機能を持つ砂防ダム② 下流

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