柴漬け漁を知っていますか?椎やヤマモモの枝の束で作った柴を潮境に沈めておき、ウナギやエビが柴に入るのをスクイダマで獲る漁法です。今では、ほとんどやる人がいなくなりました。その漁法を伝えるために、四万十市中村で柴漬け漁をやっている漁師と一緒に柴漬けをやってきました。

柴漬けの巨大柴づくり!

山へ柴づくりへ

川漁師は山にも行きます。それは、川漁の道具づくりのため・・・。今回使う木は「椎(しい)」です。この葉っぱの感じがウナギやエビのお気に入りのようです。ただ、この椎を大量に仕入れるのが難しい。地元の山師にお願いして何とか確保できました。椎の木は割れやすいので、自分で伐倒するのにも注意が必要です。

柴はかなり大きく、150㎝程の木が10本くらいまとめられたものです。「柴」というのでもっと小さいかと思いましたが、大きく、重くなかなかの迫力です。

「良さそうな」木を選ぶ

伐倒された椎の中から、良さそうな木 ー 葉がたくさんついているもの、枝のつき方が上にまとまっていること、150㎝程の高さに揃えられること ー を選び、10本ほど引っ張り出します。これがかなりの重労働。椎の木って重いですね。

「良い感じ」の大きさにまとめる

1本ずつ太さや葉の付き方が違うので、漁師に「ええぞ。」と言われるまで椎を重ねてみます。10本くらいまとめたら紐で縛るのですが、この巨大なブーケを縛るのがこれまた大変。きつく縛るために巨大な束をゆすりながらなんとか縛り上げます。縛るにもコツがいるので、初心者がやるとバラバラになったり緩かったりと、苦戦しました。

これでやっと1つ完成。巨大なブーケです。

巨大ブーケをたくさん作る

この柴を昔は100個近く作っていたそうです。朝から夕方まで3人で頑張りましたが20個にもならず、へとへとです。昔は、冬の間にせっせと作っていたようです。

柴漬けをつけますよ

川舟もワサワサと

さて、できた柴は、軽トラにワサワサといっぱいに積み込んで河原へ向かいます。そして、川舟に全部載せる。はたから見ると何を積んでるんだ~!?と不審に思うほどワサワサとして、船外機を動かすために座ると前が見えません。心なしか、船外機も雄たけびを上げているような・・・。

柴のつけ方

柴はロープで7~8個を繋ぎ、連にして川に入れていきます。柴を縛っている部分にロープを括り付け、等間隔に柴をつけていきます。柴は自身の重みと水を吸って沈んでいきます。つけたては、木が流されているようにしか見えません。重たい柴を思いっきり投げ込んで、このまま数日待ちます。なかなかの重労働後に川舟で感じる川風の気持ち良いこと。夕暮れもきれいで良い柴漬けができました。

柴漬けをあげますよ・・・ウナギは獲れたか!?

さて、柴漬けで鰻は獲れるのか?柴をつけた日から、1年・・・(タイミングが合わず)。またお供してきました。

朝の川へ

川漁師に聞くと、1年経って、いろいろと改良し、より簡単に縛れるやり方を見つけたようです。最近はせっせと柴づくりに励んでいると言います。さあ、朝の川へ出かけます。

第1、2ポイント:初めてつけてみました

第1ポイントは、今回初めてつけてみたところらしい。いろんな場所を開拓しないと~ということです。

さあどうか。重く沈んだ柴を引き揚げます。かなり重いので舟の端でてこの原理を使いながら上げます。そこで登場するのが、巨大なタモ(スクイダマ)。柴を丸ごと包み込めるほどの大きさです。柴が水面に上がってきた瞬間にタモを下に入れます。柴の中にウナギや魚、エビがいるのでそれらが逃げないようにしっかり包み込まなければいけません。柴もこのタモに入るくらいの大きさで造るのも大事。船の端で柴全体をゆすって獲物をタモに落とします。1人が柴を持ち、1人がタモを持ち。これを1ポイントで7~8回繰り返します。

さて、結果は?う~ん。このポイントでは、鰻GETならず!その代わりに様々な魚が獲れました。特に、タネハゼが可愛い!現上皇明仁様は、ハゼの研究者でもあり四万十川でこのタネハゼを見た時に大興奮されたらしいです。

第3ポイント:サツキハゼレーン

第1,2ポイントで分かるように、柴漬けではたくさんの珍しい魚が獲れます。鰻だけでなく、川漁師はこういった魚を販売しています。サツキハゼは、人気な観賞魚でなかなか良い値段がするようです。次の第3ポイントは「サツキハゼレーン」と川漁師は呼んでいました。サツキハゼがよく獲れるようです。今回は・・・ぼちぼちといったところ。

第4ポイント:ウナギレーン

待ってました!待望のウナギ!ここのポイントでウナギGETです!!!小さい鰻も大きい鰻もいて多種多様。残念ながら、柴をあげた瞬間に逃げてしまった鰻もいました・・・ウナギが獲れると嬉しくなりますね。

第5ポイント:アカメレーン

アカメは貴重な魚ですが四万十川では漁獲しても良いとされています。最後は「アカメレーン」。アカメの幼魚を狙うポイントです。何度もつけていますが、いまだに1尾も獲れていないようです。それだけ貴重な魚です。

計25柴をあげ切りました!!!お疲れさまでした。

獲物たち

・ウロハゼ

・サツキハゼ

・タネハゼ

・カワアナゴ

・チチブモドキ

・ミミズハゼ

・ワタリガニ(ノコギリガザミ)

・ウナギ

など。

他にも、数えきれないほどのヌマエビ・・・クモ・・・

柴漬けでは下流域の多種多様な魚に出あうことができます。本当にたくさんの種類がいるので見分けるのか大変。特にハゼ。四万十川の豊かさを体感できる漁業なのかもしれません。

アオリイカの卵!!!