安藤 正博(あんどう まさひろ)

安藤さんの基本情報

・四万十町米奥出身

・特技:釣り

「釣りバカ」とは安藤さんのことです。多分。

安藤さんは、年中魚を釣っている。オフはない。仕事は介護福祉士だが、釣りをしたいので基本的に夜間勤務をして週3日は釣りへ行く。アメゴ、サツキマス、ヒラメ、マゴチ、ロックフィッシュなどなど釣り全般を楽しむが、特に鮎の友釣りにアツい。かれこれ30年。実家が父の始めたおとり家で、小さいころから川で遊んでいたが、本格的に鮎釣りを始めたのは25歳くらいからだった。20代初めは市内の眼鏡屋に勤めていたが、夏に帰ってきたときに父から友釣りに誘われて、やってみるとめっちゃ面白い。次の日にその足で5万円の釣り竿を買い、そこから30年ずっと友釣りが大好き。息子には小学生の時から友釣りを教え、他にも弟子が3~4人いる。近所の子どもにも釣りの先生として知られている。

四万十川と鮎釣り

鮎釣り漁師は孤高の存在で、ひたすらに鮎と川と向き合っている。情報を出さないので、認知度は低い。一方の安藤さんは、趣味として全力で楽しみたいという。

四万十川で鮎を釣りたい人は、まずおとりを買う。おとり屋は釣り人と四万十川のつなぎ役だ。お父さんがおとり屋をやっていたこともあり、安藤さんも自宅でおとりを販売している。日中は仕事でいないため、良心市方式でおとりを買えるようにした。家にいるときはポイントや状況を教えてあげている。自分が友釣りをするからこその情報だし、四万十川に釣りに来て気持ちよく帰ってほしいという。

自宅の一角でおとり鮎を売っている
鮎の状況を情報交換しながら接客
釣り竿と魚拓、魚釣り道具だらけ!

全国からくる友釣り師たち

四万十川の友釣りは人気が高い。川がデカいし、鮎がデカい、人も少ない。鮎釣り師にはあこがれの地であり、全国を回るトーナメンターもやってくる。四万十川は広いが故に、ポイントや川を見る力がないと釣れないことも多い。他の河川と違って、石を転々とする釣りが基本だ。上級者向けの川かもしれない。ポイントを知りたがる人は多いが、地域とのトラブルを避けるためにSNSでは拡散しないよう、十分気をつけている。釣り人のマナーが悪く、農業者とのトラブルで入川道に柵と鍵を付けられてしまうこともある。

安藤さんは、仲間内の秘密のグループ「club ayudes」を作り、1枚500円のステッカーを購入してもらい、情報共有をしている。どこでどうやってどんな鮎がどれくらい釣れたのか。公にはできない秘密の情報を共有する。グループでは、釣りの後ゴミを拾って帰ることをルールにしている。釣りをしていると川のゴミに目が行くし、なかなか普通の人にはとれないゴミもある。釣り人の自分たちが一番川で遊ばせてもらっている。一つでもゴミを拾うことが、川のためになると考えているのだ。

「club ayudes」のステッカー

自然を感じて鮎を釣る

友釣りの上手い人から「石を見ろ」と教えられた。水中でピカピカ光る石が良い。対岸の岩で水の流れを読む。川だけではなく、周り全体の自然を見ろ。栗の花、椎の花が咲くと鮎が瀬に入る。ツツジの花を見ると鮎が捕食モードになったな、水が温いな、鮎の追いが強くなるぞ。この微妙な感覚を忘れないように毎日川の様子を日記につけている人もいる。五感をフル活用して鮎を釣る。なにより、鮎がかかったとき竿に伝わる振動が最高だ。

四万十川の変化

今の四万十川は汚れがひどい。砂礫が多くて、目詰まりしてエビの棲みかがない。護岸も埋もれてしまっている。透明度も落ちた。昔は鰻が逃げるのが見えるくらい透明で、石を動かして出てきた鰻をウバシで獲っていた。

子どもたちには、川遊びをしてどんどん石を動かしてほしい。今、川は危ないと教えられ、気軽に行くことができない。子どもが川で遊ぶ機会や環境を作ってあげたい。

これから

まずは現状維持。四万十川に多くの人に遊びに来てもらいたい。そのために暮らしやすく遊びやすい環境整備が必要だ。定年退職したら川のガイドをしてみたい。鮎釣りを教える学校みたいなものも作ってみたい。川の保全にもつなげて、行政や民間と協力して考えてみたいと思っている。

本当の釣りバカとは安藤さんのことだ。釣りの話をしたら止まらない。これからやりたいことも素敵だ。安藤さんの鮎釣り学校では、魚釣りだけでなく、自然の楽しみ方も教えてもらえるだろう。川の変化にも敏感で、教えてもらうことばかりだ。これからもどうぞよろしくお願い致します。