時季外れの鮎が大漁!!

2022年12月26日。リバーマスターの吉良さんから、「鮎が大量におるぞ!」との電話。
家地川堰堤手前、支流が合流する付近で竿を出している人を発見。

鮎がどんどん釣り上げられます。
3尾まとめてかかることも・・・
入れがかり状態!!!!!
川の中をみると、真っ黒に鮎の群れが。

この時期の鮎は河口付近まで降下するはずですが、減水のせいかダムから降下しきれなかった模様です。釣りあげられた鮎は、お腹が大きく、脂がのってつややかなものばかり。お腹に針がかかった鮎はこぼれんばかりの卵がキラキラと。これはさぞ美味しいだろう・・・。

少し上流側にはサギがおり、ミサゴが空をクルクルと。鮎を懸命にかけるオンちゃん達。

帰りに鮎をたくさんもらいました。ありがとうございました~☆

専門家に聞いた「鮎はなぜ河口に下らなかったのか?」

「千曲川におけるアユの産卵降河移動 井口恵一郎・伊藤文成・山口元吉・松原尚人」によると、今年の四万十川は、降河期の雨が少なく渇水気味であったために、アユが上流に残留しやすい条件で、アユの成熟が進むと、下流域に降下せずとも適当な場所を見付けて産卵するのは珍しくないようだ。

たかはし河川生物調査事務所の高橋勇夫さんは、今回の現象は、アユが「下流に下るルートを見失っている」または「ダム湖を海と勘違いしている」ということだという。以下、高橋さんからのメールを転記する。

「家地川ダムは大きなダムではありませんが、貯水はするので流速が極端に遅くなります。そうすると、走流性を使った降下行動が取れなくなり、下流に下ることができなくなります。そして、走流性を失うほど緩い流れであれば、そこを海(またはそういった機能を持つ保育場)と解釈して、滞留、産卵をするということになるようです。ただ、ダム湖内には産卵適地がないのでダム湖に流れてくる支川に遡上し産卵するということになります。こういった事例は関東以南のダム湖でごく普通に見られ、「陸封アユ」として水産的にも活用されています。高知県では、中筋ダム、鏡ダム、早明浦ダムで陸封アユが発生しています。家地川ダムの場合は、ダム湖流入河川で産卵して(ちなみに産卵は四万十川本流のダム湖流入点の秋丸付近でも行われています)孵化した仔魚がダム湖に入ってきても、ダム湖の規模が小さいために、プランクトンが十分に発生せず、餌不足となります。そのため、ダム湖内で餓死するか、一部は緩い流れに乗って、ダム堤体にたどり着いたあと発電所に取り込まれて衝撃死するか、運良く魚道に入ったとしても海にたどり着く前に餓死または捕食されて、死亡します。いずれにしてもダム上流での産卵は完全な無効産卵です。なお、家地川ダム周辺は産卵好適地はないので、産卵できないまま冬を迎えて、低水温で死亡するアユもいる可能性が高いと思います。」

「今年のように、10月以降に雨が少ない年は、『下れないアユ』が多くなると思います。ただ、いつもダム湖を下れないかというと、家地川ダムの場合はそうでもなく、ある程度の雨量があれば、河川流量が多くなるため、ダム湖内にもアユが感知できる程度の流速が生じるようです。そのような場合は、ダム堤体付近まではたどり着いています。産卵期(親アユの降下期)に大雨が降って、ダム湖のゲートが開いた場合は、アユたちはスムーズに通り抜けて、下流の産卵場へとたどり着くことができていると思います。」

「確実に言えることは、ダム湖を遡上させることは、アユ資源の保護という観点からは、負の行為です。島根県の江の川では、天然アユ資源の保全のために中流のダムの魚道を遡上できなくするという対策を時限付きで取ったという事例もあります。もちろん、上流の漁協とも十分に協議を行った上での措置でした。四万十川では資源水準が低下した時期に如何にして産卵を保護するかというのが、かねてからの課題ですが、遡上が多くなると「得する」上流側で産卵親魚を取っていては、下流側に産卵の保護を求めることはできないでしょう。結局、ダムにしろ落ち鮎漁にしろ、人の都合の狭間でアユたちは翻弄されているように思えます。」

ダムに限らず人間の暮らしが鮎をはじめとした生物に与える影響は大きい。その一方で、流域の住民にとって、鮎を獲ることは楽しみの一つだ。高橋先生が言うように、人の都合で鮎たちが翻弄されていることは否めないが、今回のように人が鮎と遊ぶことも必要なことだと思う。もちろん、鮎の降河産卵を阻む様々な課題については、今後人と鮎との関係を続けるためにも、考えていかなければいけない問題だと思う。