こんにちは、スタッフの丸石です。
当財団では、数年前から四万十川のあらゆるデータを集め、データベース化して、四万十川を守っていく一助にしたいと考えていました。今年度よりやっと本格始動しました!!!データは当財団ホームページ上で順次公開予定です。ご期待ください。
とはいえ現在は、膨大な生データの収集作業を「必死に」行っているところです(公開はまだ先になりそう・・・)。これが、とても大変なのです。四万十川に関することならなんでも集めよう!としているのですから・・・何を?どこから?どれだけ?集めていくか。未知の世界です・・・。そんなどたばた話を進捗を交えながらブログでお伝えしていきます。
まずは、「水質」
四万十川はきれいなのか?
漠然と「四万十川」のデータを集めるのは難しい。とりあえずのテーマを設定し、そこから広げていこうと思います。
まずは、、、、何といっても「水質」。「四万十川の水は本当にきれいなの?」を調べてみました。
そもそも、水の「きれい」って、どうやって決めているのでしょうか?
環境基本法(第16条)には、公共用水域の水質汚濁に係る環境上の条件につき人の健康を保護し及び生活環境を保全するうえで維持することが望ましい基準(以下「環境基準」という。)が示されています。生活環境の保護に関して、河川では6類型の基準値を設け、測定項目には、pH,BOD,SS,DO,大腸菌があります。環境基本法では、この基準できれいな河川かどうかを判断しています。
この環境基準ができるまでには長い歴史がありました。四万十川に限った話ではないのですが、基礎知識なので少し説明します。明治維新以降、急速な近代化で公害が発生します(足尾銅山鉱物事件が公害の原点として有名)。高度成長期にはイタイイタイ病、水俣病などが社会問題になり、「水質汚濁防止法」ができました。工場の排水などが規制され処罰の対象になったのです。それから、憲法第25条に基づく環境基本法も制定され、「環境基準」や「排出基準」が定められました。
四万十川では、上記環境基準に加えて、高知県が住民にわかりやすく馴染みやすい基準として「清流基準」を追加で設けています。清流基準の項目には、清流度、全窒素量、全リン量、水生生物があり、この項目が基準に到達しているかで「川がきれいか?」が分かるようになっています。
四万十川の水質調査データについては、以下のリンクから確認できます。
・高知県 四万十川条例第23条に基づく「清流基準」について
https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/030701/2017100600014.html
・国土交通省 河川水質の現況
https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kankyo/kankyou/suisitu/
・国土交通省 水文水質データベース
http://www1.river.go.jp/
水質を調べたくてもわかりづらい現状
どこをみれば四万十川の水質がわかるのか?
実際に調べてみると、まずリンクやページが探しにくい。おまけに当該ページを開いてみても、正直、数字が並んでいてその意味するところが分からない。で、結局水質は良いのか?悪いのか?BODやpHなどが表す意味と基準値を勉強していないとわからないでしょう。
また、当たり前ですが、データは年に数回の計測値にすぎません。調査したときの川の状態がどうだったのか?その前後は?もしかしたら大雨が降った後かもしれない、渇水だったのかもしれない。その前提条件によって数値は大きく変わるのに、そのあたりの情報はみつかりませんでした。川のリアルタイム監視カメラを国交省や四万十町が設置していて、ある区間の川の外見はチェックできますが、水質をリアルタイムで測定し一般公開している機関はありませんでした。
私達が流す水「排水」
川の水は、様々なところから流れ込んでいます。雨水や山に保水されていた水、地下水、排水路から流れ込む様々な水が川となります。川が汚れる原因も様々です。野生生物が出す糞尿をはじめ、私たちの暮らしから生活排水、農業排水、工場排水などもあります。
まずは生活排水について、データを収集しました。
生活排水の処理
排水については水質汚濁法で「排出基準」が決められています。また、下水道法、浄化槽法などで細かい基準もあります。高知県には、国の計画に従い1997年から2017年まで四万十川流域別下水道整備総合計画がありましたが、当初より環境基準が守られていることから計画の必要はないと更新されず、2018年からは高知県全県域生活排水処理構想を基に各市町が事業計画実施を行っています。
生活排水の処理方法は3パターンあります。
①下水道を整備し、全ての汚水を一カ所に集め終末処理を行う、
②集落単位で汚水を一カ所に集める農業集落排水施設
③家庭ごとに汚水すべての処理を行う合併処理浄化槽
そのほか、いわゆるぼっとん便所の家は、バキュームカーがし尿を回収し、し尿処理場で処理されます。し尿以外の汚水は未処理のまま河川に流されています。現在、新築される家は下水道整備地域でなければ浄化槽を設置しなければいけません。浄化槽の設置には行政からの補助が出ますが、数百万の費用が必要です。浄化槽のない家には浄化槽の設置を促していますが、費用が高額なためなかなか整備が進まない状況です。四万十川条例、各市町の計画には、四万十川の清流保全のために浄化槽設置の促進が記述されていますが、浄化槽は各個人の資産扱い(つまり各個人で設置してくださいね)となっています。
各市町の排水処理状況、排水処理能力、処理後の水質基準はどうなっているのかを調べました。
排水の基準は、排水システムごとに定められています。この情報にたどり着くのも簡単ではありませんでした。ウェブや文献で調べても出てこなかったので、流域自治体の担当部署に電話をかけて確認しました。電話して集めたデータは、作成予定のデータベースに整理して公開します。
どたばた小言
四万十川のデータで水質の話は欠かせないと思いますが、こんなにも情報が得にくい状況だとは思いませんでした。益々、広く深いデータ収集を行い、皆さんに提供する重要性を感じました。頑張ります。これからもどたばた話を更新しますので、お楽しみに。
丸石が実際に調べてみて感じたことを以下につらつらと書き出します。この道の専門ではないので、見当違いも多々あるかもしれませんが、一市民が自分の暮らす環境がどうなっているのかを調べた感想としてお読みください。不明を正すご指摘、ご教授、もちろんいただければありがたいです。
- 排水施設は法律に基づいて運用しているが、その基準自体の成り立ちと現状を把握している人が少ない。排水施設と排水基準の情報が手に入りにくい。
- 生活排水の排出に関する事業は環境に大きな影響のある仕組み・事業にも拘わらず、全容を把握し改善に努める人がいないことは大きな問題。
- 法律で定められた排水基準が、四万十川の生態系に影響を与えないものなのかどうかがよくわからない。
- 水質汚濁防止法で最低限のレベルはクリアされるが、汚染物質を大量の水で希釈すれば基準クリアするなど抜け道も多々あり。
- 四万十川の清流を守る目的の清流基準であるはずが、目標指標に過ぎず規制の対象にならないため、基準を超えても水質改善に向けて動く仕組みになっていない。
- 四万十川の生物にとっていい環境とはどんな環境か?キレイになりすぎて生物が少なくなったという証言もあり。目標にすべき水質とはどのような状態か?