四万十川流域は流域5市町で「四万十川流域の文化的景観」として、国の重要文化的景観地に選定されています。流域のなかでも源流域にあたる津野町で、文化的景観を学ぶ講習が行われるとのことで参加してきました。講師はNPO高知文化財研究所の溝渕博彦先生です。

まず、文化財の考え方とその活用事例、それと文化的景観とを較べながらの説明がありました。文化財は、オーセンティシティー(真実性)が重要視され、当時の財がどれくらい残っているのか、直す際も当時の手法で元通りに直すことが求められるなど、「当時のまま」ということが重要なのだとのことでした。

一方の重要文化的景観については、文化的景観に選定されていることを住民が知らないことが目下の課題であり、今後普及啓発を行っていく必要があるなかで、小中学生に文化的景観の授業を行い、それを子どもが親に伝えるなど、伝え続けていくためのシステムを作ることも必要だとのご指摘がありました。また文化的景観においては、景観の価値を担保する物件を重要構成要素として特定していますが、所有者が重要構成要素であることを知らずに壊してしまう、または変更を加えてしまうケースも多く、文化的景観を維持していくためにも、先人がどんな暮らしをしてきたか、今の景観ができた過去の背景を読み、今の人々がしっかりと価値を伝え続けていくことが必要だとのお話がありました。そのなかで、地域の人が関わって、景観や地域文化を活かしたイベントや活動を継続的に行っていくこと、またそのためのプレイヤーやきっかけになるキーパーソンを育むことが、求められるのではないかとのことでした。

溝渕先生が仰るように、文化的景観の選定からもうすぐ15年が経とうというなか、住民に向けた情報発信が十分にできておらず、住民のなかで文化的景観の認識が薄れていっていることは流域全体の課題となっています。今回のような住民に向けて文化的景観のメッセージを発信していく機会はあまりなかったので、こういった機会を今後増やせるように文景協でも情報共有しながら流域全体で取り組んでいかなければいけないなと感じます。

今回は座学でしたが、次回は芳生野地域で現地学習が行われる予定です。秋の津野町を楽しみながら、景観への理解を深めたいと思います。