徳島県神山町で開催された石積み甲子園に行ってきました。石積み甲子園とは、高校生たちが石積みを補修するスキルを評価する大会で、今年から始まった新しい取り組みです。日本の農村景観に欠かせない石積みですが、現在その技術を持つ人が減ってしまい、保全が困難になっています。四万十川流域も例外ではなく、棚田や家屋、神社などの石積みが魅力的な流域の景観を形作っていますが、高齢化で石を積める人が少なくなってきています。
 そんななか始まったのが石積み学校という取り組み。

石積みの技術を全国に広めようと、各地でワークショップを行っています。その石積み学校が主体となって開催された今回の石積み甲子園。技術の継承という観点でも興味深いですが、高校生がどんなふうに石積みと向き合うのか、楽しみです。

 今回の参加校は、ホスト校である徳島県立城西高等学校神山校と、愛媛県立伊予農業高等学校、愛媛大学附属高等学校、岡山県立新見高等学校の4校。みんなこの日に向けて練習を重ねたそうです。集大成の今日、どんな石積みを見せてくれるのでしょうか。

 会場は神山校の向かいの山上にある長満寺隣の段々畑。高さ約1.5m、幅約1.3mの区画を各校が担当し、崩れかかった石積みを床掘り(崩して)してから積みなおします。午前9時、主催者石積み学校の真田純子先生(東京工業大学)をはじめとした関係者の挨拶や、事務局の金子さんから大会の流れの説明があって、競技開始です。この大会では4名の審査員が審査を行い、石積みの正確性、チームワーク力、効率性などを評価します。審査員には真田先生のほか、四万十川財団の理事を務めていただいている西山さんもいらっしゃいました。

 まず取り掛かったのは石積みを崩す作業。これを「床掘り(とこぼり)」といいます。土を取り除いて上から順に崩していきます。何度も練習を重ねてきたメンバー同士、チームワークもばっちりです。上で作業する人、下で作業する人、それぞれ役割分担しながら取り組んでいました。11月上旬だったにもかかわらず、気温は20度越え。快晴も手伝って、作業をする高校生はかなり暑そう、、、しっかり水分補給をしながら作業を進めます。愛媛県の出場チームはポンジュースを持参し、おやつとしてミカンを各校に配るサービスも。熱中症にならないよう、生徒同士がこまめに声を掛け合いながら水分補給をする姿も印象的でした。助け合いながらやっている感じがとってもいいですね。

さて、崩した石は、足元に大きさごとに分けて並べ、石の後ろに詰めるグリ石は手箕(てみ)の上にまとめておきます。崩す前に石に番号を振り、戻す際の指標にする高校もありました。そして、だんだん崩し終わり、床掘に入った段階で思わぬハプニングが発生。想像以上に大きい石が次々見つかり、高校生では対処しきれない状況に。それでも、隣の高校の生徒も加勢し、金子さんも手伝いながら、周りの人もアドバイスを送り、何とか石を出すことに成功!そんな光景に、昔は地域でたくさんの人が集まって、ああでもない、こうでもないと議論しながら賑やかに石を積んでいたのかなと、ふと思ったりもしました。

 結果的に床掘にかなり時間がかかり、このタイミングでお昼休憩に。会場にはイベントの協賛企業のほか神山校の生徒や地元のコーヒー屋さん、パン屋さんなどが出店しており、訪れたお客さんで賑わっていました。

 お昼休憩を終え、午後の作業が開始。土台から順に積み上げていきます。大きくて掘り出すのに苦労した石はいい土台となってくれたようで、それを活かしながら石を積んでいきます。ぴったりの石を探す人、石を置いて調整する人、離れたところでアドバイスする人、上から奥行を確認する人、グリを詰める人、みんなで力を合わせて作業を進めていました。素人から見ると、どの高校もきれいに積めていて甲乙つけがたいと思っていたのですが、はたしてどの高校が優勝するのでしょうか。

 予定では15時終了予定でしたが、どの高校もまだ十分積めていなかったので、競技時間を少し延長することに。高校生の帰りの汽車の時間もあるので、残り時間も気にしながら積んでいきます。どの高校もだいたい1m程積めたところで時間となり、競技終了。4人の審査員が石積みの前で議論し、作業の様子もふまえて優勝校を選出します。
 

結果発表 記念すべき第一回優勝校は? 

栄えある第1回大会の優勝を掴んだのは、愛媛県立伊予農業高等学校!おめでとうございます!

石積みの正確性の高さが評価されました。また、実力が拮抗していたとして、急遽「審査員特別賞」も設けられ、見事、岡山県立新見高等学校が受賞!!神山校、愛媛大付属高校も、レベルの高い石積みを見せてくれました。参加していた生徒の皆さん本当にお疲れさまでした。

 今回、予想を遥かに超えるアツい石積みバトルを見ることができました。高校生があんなに真剣に石積みに向き合っているのを見て、頼もしいなと感じました。とても楽しそうに石積みをする姿が印象的で、石積みの未来は明るいなと感じさせてくれます。こういった活動が全国に広まるといいですね。
 実は今回、四万十からも出場しないかと相談を受けていたのですが、残念ながら調整が間に合わず出場には至りませんでした。高校への説明材料もばっちり確保できたので、来年こそは四万十川流域の高校も参加し、このアツさを体験してほしいと思います。そしていつか流域で開催できるように!石積みムーブを四万十でも起こしていきたいです。こうご期待。