全国の重要文化的景観選定地が集まる協議会(全国文化的景観地区連絡協議会)の大会が毎年開催されており、今年の開催地は岩手県の一関市ということで、行ってきました。一関市は宮城県に隣接する岩手県最南端の市です。観光スポットとして有名なのが厳美渓。「かっこうだんご」という渓流を挟んだ対岸のお茶屋さんからロープを伝ってお茶と団子が提供される名物団子が人気の景勝地だそうです。
さて、そんな一関市にはどんな文化的景観があるのでしょうか。

一関市の文化的景観は「一関本寺の農村景観」として平成18年に文化的景観に選定されました。選定を受けたのは滋賀県近江八幡市に次ぎ全国で2番目という、文化的景観の先進地です。一関本寺の文化的景観の特徴は、何といってもその農村景観。栗駒山に臨む盆地に広がる広大な水田は、中世から変わらず維持されているものであり、中世からの農村景観が残る貴重な場所として重要文化的景観に選定されました。またかつて本寺は「骨寺村」と呼ばれ、平泉中尊寺の別当領だったことから、中尊寺との関りも色濃く残っています。

大会一日目は、一関本寺の歴史と、地域のこれまでの取り組みについての講演、また「地域が生き続ける持続可能な文化的景観」をテーマにした全国の事例発表がありました。

そのなかでも話題の中心になったのが、地域住民が主体となった、または地域住民を巻き込んだ地域づくりについて。毎年の全国大会でも各地の住民団体の活躍が共有され、意見交換を行いながら住民が地域の文化を学び、文化を生かした地域づくりに関わっていくことの重要さを確認してきました。今回の一関の場合でも、地域住民が主体となって魅力ある地域づくりのために何ができるかを考え、食事を提供する施設や文化的景観のガイダンス施設を整備し、自分たちがプレイヤーとなって活動してきたとの発表があり、その活動の中で地域への愛着も強くなり、地域づくりが続いていくのだということがわかりました。

また事例発表では、愛媛県西予市と鳥取県智頭町の取り組みについて発表があり、西予市からは住民が主体となった地域づくりが行われ、積極的に地域の文化を知る取り組みなども行われており、文化的景観の制度を活用しながら持続的な地域づくりを支えていきたいとの説明がありました。また智頭町でも地元の高校生に古民家再生にかかわってもらうなど、地域を巻き込んだ取り組みを行っており、今後その動きを加速させていきたいということが共有されました。

全体を通して、やはり地域づくり、ひいては文化的景観の保存には、「地域住民」の意識が重要になってくること、住民が地域の文化や景観の価値に気付き、地域づくりにかかわり、地域の愛着を育てていくことが、文化的景観の保存においても重要なのだなと感じました。
四万十の場合は選定から年月が経ち、地域住民が文化的景観にかかわることも少なくなってきました。近くに西予市といういい事例もあるので、他の地域の取り組みも参考にしながら、地域住民と一緒に動きを起こせるようにしたいなと思いました。

またプログラムの途中では、地元の噺家である地状亭金目さんによる高座が設けられ、骨寺村と中尊寺の歴史について面白く、かつわかりやすくお話しいただきました。地元の歴史を語り継ぐ人がいることは貴重ですね。実はタクシードライバーが本職だそうで、希望があれば運転中に今回のようなお話しもしてくれるのだとか。金目さんのタクシーに当たったらラッキーですね。一関に行かれた際はぜひ探してみてはいかがでしょうか。