四国EPOさん主催の「物部川流域生態系保全から考える持続可能な地域づくりへのアプローチ~新たな仕組み『自然共生サイト』をどう活かす?」に参加してきました。自然共生サイトとは、「30by30」(2030年までに陸と海の30%以上を保全する)達成に向け、日本版OECM(Other Effective area-based Conservation Measures)として環境省が2023年から認定を始めた取り組みです。
「自然共生サイト」とは、民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のことです。
環境省 30by30 HPにて
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/kyousei/
奥物部の自然の現状から流域の未来を考える 三嶺の森をまもるみんなの会 押岡茂紀さん
三嶺は、鹿の食害で林床の植生が衰退し、土壌侵食・土砂流出も進み、大きな問題となっていました。それを解決すべく結成されたのが「三嶺の森をまもるみんなの会」です。高知県や森林管理署と連携し、防護柵設置や林床植生回復の方法を模索しているとのこと。異常気象、人口減少も含め、森林生態系再生には課題が山積みですが、二ホンジカとの共存も視野に入れて活動を続けていきたいとのことでした。
『自然共生サイト』の仕組みと可能性 環境省中四国地方環境事務所 山田浩昭さん
自然共生サイトのスタートから認定基準、活用、目標について紹介してくれました。自然共生サイトの認定基準は難しいものではないいので、多くの地域や企業に申請してほしい、令和7年度から土地に紐づいた活動を認定していくことも考えているとのことでした。
県有林の『自然共生サイト』への登録を契機として 愛媛県県民環境部環境局自然保護課生物多様性係 武智渉さん
愛媛県で今後自然共生サイトを拡げていくために、県が先頭でリードしなければならない前提で、一度申請を経験することで、民間からの相談・アドバイスに対応できるようになると考え、県有林を自然共生サイト認定の申請をしたそうです。エリアの写真や、生物調査のデータ提示に苦労したそうですが、関連部局に問い合わせ、審査員が見やすい形に整理し、なんとか申請できたということでした。
3つの事例発表の後、申請経験者、審査員、環境省の方々と意見交換・質問する時間がありました。焦点になったのは、自然共生サイトに認定されることのメリットについて。認定されれば、何かが保護される、優遇されるといったメリットが受けられるのかどうか、もっともな疑問です。現時点での直接的なメリットについて、明確に提示されたものはでませんでした。企業イメージの向上には寄与するかもしれません・・・。
認定基準のあいまいさを感じるので、登録されても価値が担保されないのではないかという意見もありました。これについては認定審査員の方から、「いったん自然共生サイトに登録されても、その後の調査で継続的な活動や申請時の状態が守られていなければ認定が消されることがある。従って、認定されたものについて一定のレベルはきちんと保証されると考えている。」と回答がありました。
自然共生サイトの制度で行いたいこと、現状での課題など、よくわかりました。もともと30by30達成のための手段として始まった制度だということですが、身の回りの自然環境・生態系の価値に多くの人が気づく良い機会にもなりうると思います。この制度をきっかけに生物多様性への理解が広まるといいなと思います。主催者のみなさん、登壇者の皆さん、ありがとうございました。
イベントについて
物部川流域では、南国市・香南市・香美市が連携し、森林から海までのつらなりを視野に、生活や産業の持続可能性を高めるための生態系保全活動が展開されています。
環境省四国環境パートナーシップオフィス(四国EPO)HPより https://4epo.jp/about
一方で、世界的に生物多様性の劣化が進行しており、それを食い止めてプラスに転換するために、陸域・海域のそれぞれ30%を保護区にする国際的な目標が設定されました。それに伴い、日本では新たな仕組み「自然共生サイト」を導入して登録を推進し、令和5年度前期は環境大臣認証を122カ所決定しました。本イベントでは、多様な主体の関りによる生態系保全の在り方を考え、地域において「自然共生サイト」をどう活用できるか意見交換します。
登壇者(敬称略)
〇押岡茂紀(三嶺の森をまもるみんなの会、四国EPO運営委員)
〇山田浩昭(環境省 中国四国地方環境事務所 自然環境調整専門官)
〇武智渉(愛媛県県民環境部環境局自然保護課生物多様性係 主任)
〇兼松方彦(物部川21世紀の森と水の会事務局長、四国EPO顧問)
〇塚本愛子(県立のいち動物公園園長)
〇谷風凜(高知大学農林海洋科学部 農林資源環境科学科、森里海つなぎ隊)