いつも清流通信をご愛読いただきありがとうございます。さて、皆さんは普段ラジオはお聴きになりますか?明るいトークや楽しい音楽、リスナーとの距離の近さが魅力ですよね。ラジオは最新ニュースや交通情報を得られるだけでなく、災害時に強い媒体としても知られています。そんな生活に欠かせないラジオですが、昨年12月、幡多地域に待望のコミュニティFMが誕生しました。今回は地域密着型のラジオ局、「FMはたらんど」についてご紹介いたします。
コミュニティFM コミュニティFMとはFM放送の一種で、VHF76.0~90.0MHZを使用して放送されている。放送エリアが市町村の範囲ほどと限定していることが特徴で、その分地域に密着した情報を届けることに特化しており、地域活性化に役立つツールとして期待されている。また、災害時には避難所の情報など地域の最新情報を発信し、インターネットが使えない状況下でも多くの人に情報を確実に届けることができる媒体として、防災での活躍も期待されている。 |
幡多地域にラジオ局を! FMはたらんど開局の経緯
今回お話を伺ったのは放送局長の山本崇史さん。山本さんは黒潮町にてご夫婦でゲストハウスを営まれており、当財団が組織する四万十リバーマスターにもなっていただいている方だ。FMはたらんどは、社長の久野秀明さんが、四万十市に移住するにあたって、仕事としてラジオ局を始めようと思ったのが始まり。久野さんは大阪から四万十市に移住し、現在は月の半分を大阪、半分を高知で生活する二拠点移住をされているそうだ。30年ほど前からサーフィンで幡多地域を訪れるようになり、田舎の風景に懐かしさを感じて移住を決意。もともと久野さんは大阪で通信工事事業の会社を経営していたので、培ってきた経験が活かせるうえ、ご自身が大のラジオ好きだったということ、また何より、「たくさんの人に幡多の魅力を伝えたい、地域をもっと知り、もっと町の人とつながりたい」との思いからラジオ局を作ることを決めたそうだ。
といっても個人でラジオ局を開局することは簡単なことではない。山本さんは開局までの苦労を教えてくれた。
「私が関わるようになったのは昨年の秋ごろからですが、構想が始まったのは7~8年前からだったようです。ラジオ局の開局に向けて全国各地のコミュニティFMを視察し、経営の実情やノウハウを学んだそうですが、なかでも親身になって助けていただいたのが山口県宇部市のFMきららさんだったようです。FMきららさんは、きらら方式という経営モデルを確立しており、そのノウハウを活かしてコミュニティFMの立ち上げをサポートするコンサルティング事業を行っているそうで、私たちもきらら方式にのっとった経営スタイルをとっています。社長の井上さんには特にお世話になって、開局できたのは井上さんのサポートがあったからこそだと聞いています。私たちも井上さんに発声練習や滑舌練習など、放送開始に向けた研修を行っていただき、とてもお世話になりました。開局にあたっては、どこで開局するかの調査に苦労したそうです。実は当初ラジオ局の開局を熱心に応援してくれた方々が三原村の方で、今でも応援していただいているんですけれど、村長にもラジオは幡多の地域活性化につながると期待を寄せていただいています。また三原村は幡多地域の中心に位置しているので、三原村での開局も検討したそうですが、電波を遮る山が多いということで、地理的にも商業的にも条件のいい四万十市中村での開局を決めたそうです。今はまだ黒潮町と四万十市の一部が放送範囲になっていますが、段階的に放送エリアを拡げていきたいですね。」
また、もう一つ苦労したのが、スタッフを探すことだったそうだ。ワンオペでラジオ局を運営していくことは難しいため、手伝ってくれる仲間が必要だったが、最初はやはり人員を確保するのに苦労したのだという。それでも社長の熱意に賛同し、8人のスタッフが集まり運営を行っている。それぞれがパーソナリティ、事務、営業等の職務を兼任しており、オールマイティに活躍しているそうだ。
このような困難を乗り越え、昨年12月12日に総務省から無線局免許を交付され、同月20日にFMはたらんどは無事放送を開始した。初回には久野社長の移住のサポートを担当した高知県職員も出演し、移住や開局への想いを語った。放送初日にもかかわらず、多くのリスナーから反応があったと言い、放送開始を待ちわびていたという声も聞かれたという。
「ありがたいことに、たくさんの方からコメントをいただくことができました。なかには県外のリスナーの方もいらっしゃって、応援しているとの声に嬉しくなりました。また、事前に「何日から放送が始まるのか」といった問い合わせもいただくなど、心待ちにされている声も聞かれたのは嬉しかったですね。」
幡多地域を元気にするためのラジオ局
FMはたらんどは、「幡多を元気にする」をコンセプトに放送を行っている。上述の通り、放送エリアが限定されているぶん、コミュニティFMはより地域の細かい情報をリアルタイムで伝えることができる。あのお店の今日の日替わりメニューの紹介、あそこのスーパーで何時からタイムセールが始まるなど、地元感たっぷりの情報を提供している。
「ラジオで地元のお店の情報を知ってお店を利用してもらうような流れができたらいいですね。ラジオを通して人とまちをつなぎ、幡多地域をもっと元気にしていきたい、という思いで私たちも情報を伝えるようにしています。そのためにも加盟店の情報のリサーチは欠かせませんし、ラジオで生のCMを入れたり、都合があえば実際にお店に伺って現地リポートしたりしています。うわべだけの情報にならないよう、実際に足を運んで自分が体験した情報を伝えるということは大事にしていきたいです。また、私たちのラジオの最大の特徴は全て生放送であることなので、リアルタイムで最新の情報を届けることができます。ぜひ地域の方々にラジオを身近な情報発信ツールとして使っていただきたいですね。」
ラジオ以外の方法でも幡多地域の活性化を目指そうと取り組んでいるのが、「clubはたらんど」という会員組織の運営だ。会員になると、FMはたらんどの加盟店で特典を受けることができるサービスで、加盟店の利用促進が狙い。会員向けのマガジン誌も作成し、加盟店の店舗情報を掲載する他、Instagramでも紹介するなど、さまざまな媒体で情報発信に取り組んでいる。
「はたらんどは完全な民間組織で、加盟店からの会費やスポンサー費で運営しています。なので、私たちの活動に賛同して協力してくれる加盟店が必要不可欠です。秋ごろから営業活動を始め、開局までの2か月間はほぼ加盟店探しに費やしました。ありがたいことに、現在は74店舗の加盟店が集まり、ご協力をいただいています。加盟店になっていただくと、当社が発行しているマガジンにお店の情報を掲載する他、パーソナリティーがラジオで生CMを行ったり、ラジオカーでお店にお邪魔して生リポートをさせていただいています。」
加盟店は幡多全域に広がっており、美容室、飲食店、宿泊施設などさまざま。マガジン誌には加盟店の情報だけでなく、FMはたらんどの紹介もたっぷり掲載されており、各加盟店やスポンサー店舗、スタジオに配置しているそうなので、近くの方はぜひ手に取ってみてほしい。会員は随時募集中とのことなので、気になった方はぜひFMはたらんどまで問い合わせを。
なお、先日は当財団が企画した四万十川カヌー清掃も生中継していただいた。実際にラジオを聞いたという方から「こないだラジオ聞いたよ、あんな活動もしゆうがやね」という声をいただき、その波及力の高さを実感した。情報発信の機会が限られている地方において、ラジオは有力な宣伝ツールであり、今後幡多地域の活性化において、FMはたらんどは欠かせないものになっていくだろう。だからこそ、行政も新しく誕生したラジオ局に高い期待を寄せている。
「現在、四万十市と黒潮町と協定を結び、災害時に自治体が発信する情報を優先して放送するようにしています。テレビやインターネットが使えない可能性がある災害時において、ラジオには安定して情報を届けられる強みがありますから、災害時の適切な情報提供が大きな役割の一つでもあります。避難所の情報や物資の支援状況など、不安な場面において少しでも安心を提供できる存在になれるようにしていきたいと思っています。また、幡多地域がより連携して活性化に取り組んでいくためにも、メディアが欠かせない存在だと仰っていただいています。幡多地域の広告塔として、これからも地域の情報を広く発信し、地域全体の活性化につなげていきたいですね。」
今後の目標
開局から2カ月が経つが、リスナーからメッセージも届くなど、既にたくさんのファンを獲得しているFMはたらんど。リスナーは50代~70代のラジオ世代が多く、特に歌謡曲が好評だという。流行りの曲はあまり流れないそうだが、昭和の名曲がたくさん流れているので、懐かしい気持ちで楽しめるのではないだろうか。順調なスタートを切った今、今後力を入れていきたいことを聞いてみた。
「やはり経営を安定させることが当面の目標ですね。そのためにも、もっと自分たちのことを知ってもらうことが必要だと思うので、足を使って営業活動をしながら、スポンサーや加盟店など、協力者を集めていけるように頑張ります。あとは、番組内容をもっと充実させていくことですね。現在は、地元のアーティストと一緒に音楽について語る番組や、幡多地域で頑張っている人を紹介する番組などを放送していますが、今後もさまざまなテーマを扱いながら、みなさんに楽しんでいただけるような番組を作っていきたいですね。例えば、観光情報を発信する番組や、移住者を紹介する番組、子どもたちの教育につながる番組などもできればいいなと考えています。また、せっかく四万十に拠点があるので、四万十川に関する番組も今後考えていきたいです。また、人とまちを繋げていくことをコンセプトにしていますが、そこから飛躍して、加盟店同士をつなぐこと、例えば仕入れ先の開拓や新商品の開発など、はたらんどを通じて地域に新しいビジネスが生まれるきっかけが生まれたら面白いなと思います。FMきららの井上さんから教えていただいたことですが、いい放送とは、ただ自分のことを喋って満足するものではなく、地域の情報を伝えて、リスナーに興味を持ってもらって、実際に行動につなげられることです。ラジオを聴いて、「こんなお店があったんだ」「こんな人がいるんだ」ということを知ってもらって興味を持ってもらう。そこから実際にお店を利用してもらう。そういった流れを生むことで、地域がより元気になっていくことを目指して発信を続けていきたいですね。」
今回の取材で、「ラジオを通して地域を元気にしたい」という熱い想いをひしひしと感じることができた。幡多に対する熱い思いは久野社長からスタッフ全員にしっかり伝播しているのではないかと思う。だからこそ、多くの人が応援し、聴きたくなるのだろう。ラジオは娯楽のためのツールという印象が強かったが、地域の活性化に繋がり、緊急時のメディアとしても重要な役割を担っているのだと感じた。FMはたらんどはまだ始まったばかり。これからもより多くの方に幡多地域や四万十の魅力を伝えられるよう、財団も連携して情報発信に取り組みたいと感じた。みなさんもぜひFMはたらんどを通じて幡多の魅力にどっぷり浸かってみてはいかがだろうか。
周 波 数:77.9MHz 出力:20W
区 域:四万十市と黒潮町の一部
(エリアに関係なくスマホアプリ「FMプラプラ」からも聴取可能です!)
放送時間:平日は7時~20時、
土・日曜日は9時~21時(当面の間は18時までの放送になっています。)
T E L :0880-34-8109 MAIL:info@fmhataland.jp
H P : https://fmhataland.jp/
住 所:四万十市中村京町2丁目2-105