四万十街道ひなまつりの公開講座が松野町で開催されるとのことで行ってきました。毎年2月中旬から4月上旬にかけて、四万十川流域(高知県5市町と愛媛県2町)で行われている四万十街道ひなまつり(主催:四万十遺産ネットワーク)。もはや四万十の春の風物詩ともなっているこのイベントですが、数年前から四万十川流域の景観にも興味を持ってもらえるよう、公開講座を行っています。今回は国の重要文化的景観にも選定されている松野町の奥内の棚田を散策しました。

講師の亀澤一平さん

 今回の講師を務めるのは、松野町役場教育委員会の亀澤さん(通称:かめちゃん)。文化的景観の担当も長いベテランさんで、松野町に対する思いがとにかく熱い方です。亀澤さんに案内してもらいながら、集落内を散策しました。

 集合場所には大きなイチョウの木がありました。逆杖のイチョウと呼ばれ、弘法大師が刺したイチョウの枝が大きくなったという伝説が残っているそうで、黄葉した姿はそれは見事なんだとか。それにしても立派なイチョウですが、実は隣に雌のイチョウが生えていたそうで、そのイチョウが枯れてしまい伐採したところ、だんだん弱ってきてしまったとのこと。奥さんがいなくなって元気がなくなったみたいですが、頑張ってほしいですね。

 
 またこの日はちょうど桜が満開でとってもきれいでした。道中も満開の桜が何回も出迎えてくれました。それにしても、見事ですね。

 奥内の集落には谷が3つあり、そこに遊鶴羽(ゆずりは)、下組、本谷、榎谷という4つの集落が展開されているそうです。谷の地形をそのまま活用し、石垣をうまく使いながら棚田や宅地を整備して暮らしてきた景観を見ることができます。よく見ると谷は棚田に利用し、尾根筋に家を建てていることがわかるんだそうです。


 また、奥内は天然林が多く水が豊富な地域なんだそう。谷から水路で水を引き、広大な棚田を潤しています。しかし近年は山が荒れ保水力も弱くなってきているとか。抱えている問題は流域で共通しているんだなと感じました。

 石垣を見るとその石の大きさにびっくりします。崩れた石垣を積みなおす体験学習もやってみたそうですが、石が大きいためなかなか難しかったそうです。また石垣の高さもけっこう高く、なかには城壁のように反りが入っているものも。先人たちの苦労やこだわりが伺えます。

 奥内には見事な棚田が幾重にも連なっていますが、この景観を維持していくには、米作りという生業を維持していかなければなりません。しかし奥内も高齢化が進み、特に棚田は大きな機械などを入れられないため、手間がかかるぶん重労働になるので、維持していくのが難しいとのこと。そこで、亀澤さんが始めたのが、農地を借りて自分でお米を作ってみること。さすが、熱い男亀澤さん。米作りを始めてみてその苦労がわかったということですが、今後もお米作りを継続していく予定なんだそうです。

 今回伺ったのは桜の季節だったので、田植えはまだでしたが、夏ごろになると立派に育った稲が青々と茂る美しい棚田の景観が見られることでしょう。また秋には、イチョウの黄葉や、黄金色の棚田も見られるはず。四季折々に美しい景色を見せる奥内集落を、みなさんもぜひ訪れてみてください。