滋賀県琵琶湖環境科学研究センターが主催するびわ湖セミナーに、土砂と生物の関係について勉強するため参加してきました。滋賀県は琵琶湖を中心とした自然環境の保全にとても力を入れており、行政はもちろん住民レベルで参考になる活動が多いので、四万十でも応用できるよう勉強させてもらっています。
今回はタイトルの通り、山から川、琵琶湖に移動する土砂と生き物の関係について、その研究成果の発表がありました。四万十川でも土砂供給の変化による生物への影響が懸念されていますが、私たち自身知識が足りないなと感じるところが多く、そんななかでの今回のセミナーはまさにぴったりのテーマでした。
セミナーは摂南大学理工学部教授の石川裕子先生による基調講演から始まり、琵琶湖・淀川流域の生物多様性の保全に向けた河川整備について、実践事例をもとに発表がありました。淀川流域には上流域に複数のダム群があり、ダムによって土砂の移動が妨げられることで河床が低下し、下流の生態系に影響が出ていたそうです。土砂は生物にとって大事な生息場所であるだけでなく、川の流路にも影響します。河床低下によって高水敷が浸水しなくなったことで樹林化が進み、流路が固定される他、高水敷が浸水することでできた水たまりに生息していた生物の減少にもつながり、生物多様性の低下といった影響が出るとのことでした。そこで、川の中に「聖牛」という伝統的構造物を設置することで、土砂が掘れるところ、溜まるところを生み出し、河床に変化が生まれるように整備した結果、水生昆虫の増加につながったそうです。またその他にも、ワンドの整備や干潟の整備を通して、淀川流域の生物多様性の回復に向けた取り組みが行われているとのことでした。発表の中で、石川先生は土砂や水の動きを許容すること、地域住民も巻き込んだ活動にしていくこと、流域全体で考えることなどが重要だとおっしゃっていました。生物多様性の回復に向けたポジティブな河川整備を、地元を巻き込みながら積極的に行っていく姿勢はとても刺激になりました。
基調講演の後には、センターの研究発表として、①下層植物と土砂の流出の関係について ②アユやビワマスの産卵床における小礫の重要性について ③湖内への土砂供給と生物の定着について発表がありました。
①では、シカの食害によって下層植物が減少し、土砂流出が増加していたが、シカが嫌いなシダ植物を下層植物として整備したことで、食害が減少し、土砂流出が減少した一方で、大雨時には粒径2㎜以上の礫が流出するようになったとのことでした。
また②では、アユの産卵には2.16㎜以上の小礫が必要であり、大水で砂礫が堆積し、流れが弱まってきたタイミングで間に詰まっていた砂が抜けてできたスペースに産卵を行うため、山から2.16㎜以上の小礫が供給されることが必要だとのことでした。
③では、1970年代から治山対策等により土砂供給が減少し浜欠け「砂地の浸食」が見られるようになったため、土砂搬入により養浜を試みた結果、ミミズ等の小さな底生生物が見られるようになったこと、またシジミ等は回復までに6年ほどかかることが分かったとのことでした。
今回のセミナーを通して、河川及び湖(四万十で言えば海)の生態系に関して、土砂がいかに大事であるかを学ぶことができました。また、供給される土砂の大きさも生き物にとってはとても重要なのだとわかりました。四万十川でも土砂供給の減少が懸念されているなか、今回のセミナーは今後の対策を考えるうえでとても学びの多い会になりました。