小出 徳彦(こいで のりひこ)

小出 徳彦さんの基本情報

・50年代生まれ

・西土佐

・大人塾 網投げ講師

川漁師に憧れた子ども時代

僕達の小さい頃は、今とは全く時代が違うので、一年中、外で遊ぶしかなかったです。「肥後守・タコ糸・塩」が3種の神器で、これでなんでもやりました。冬は「クビッチョ」で、山で鳥を捕りました。夏は川です。小学生の低学年から川漁が始まりました。最初は、親父にコロガシを作ってもらって、ミミズを掘って、ウナギを獲りました。その後、コロバシは見よう見まねで自分でも作りました。

コロガシ

夏休みや土日は朝から川に浸かりっきりです。潜って水中眼鏡でウナギを獲ったり、コロガシをつけて、朝になったらそれを見にいくのですが、起きるのが楽しみでした。あと、近所に個人でウナギを買い取ってくれる人がいて、良いお小遣いもなりました。

昔はここ(道の駅「よって西土佐」の前)に沈下橋があって、その下流が鮎漁のメッカで、それはそれは、たくさんの鮎がいました。網を投げる人がいたり、沈下橋の桁にロープを繋いで、午前中は右岸側で友釣りをして、お昼ご飯を食べた後は、左岸側を舟で戻りながら漁をする人がいました。そんな姿を見ながら育ったので、大人になったら鮎漁がしたいと思っていました。

子供でも出来た鮎漁はシャビキでした。川に潜ると仕掛けが引っかかっていて、そこから鉛や針を取り出して、竹を竿にして仕掛けを作って、シャビキをしました。大きい鮎が獲れましたよ。

石を投げれば鮎に当たるんじゃないかと思う程、昔は信じられないくらい鮎がいました。それを象徴するのが手づかみ漁です。夜、浅い瀬に足を広げて座り、そこに当たってきた鮎を軍手をつけて手づかみで獲ります。一晩に30~40匹獲れました。

昔は、つかめる程いたのに、50年以上たって鮎が減ってしまった事をひしひしと感じています。獲る事も大事ですが、次の世代に豊かで綺麗な四万十川を残していく事も大事だと常々思っています。

川漁師だった叔父への憧れ・・・

あと、私が鮎にハマっていったのは、川漁師だった叔父の影響があります。夏は鮎を出荷して生計を立てる人でした。その叔父は、袋網を舟から投げるプロでした。その袋網は持つだけで精一杯。別注の鎖がついていて、普通よりも大きく重く、網の長さも随分ありました。体感では通常の袋網の3個分くらいでしょうか。

その袋網で行う漁はとても技術が要ります。背が届かないような深い所に舟で行って、網を投げた後、石を放り、竿で水をジャッと掻き、網の端には細長い糸がついたウキがついていて、それを引っ張り上げると、鮎がベッタリ掛かっていました。

叔父の自慢は、袋網で獲られたものなので、刺し網で獲ったようなキズがなく綺麗でピチピチしている事でした。その漁の仕方を習いましたが、投げるには、とても技術がいり、何回やっても上手くいきませんでした。それができるのは叔父とたった一人の弟子だけでした。二人とも今は亡くなっていません。なので、現在は誰もその技を継いだ人はいません。

そんな叔父に憧れ、小学3年生くらいの時に、親に反対されながら、袋網を買ってもらいました。その時に口添えしてくれたのも叔父でした。嬉しくて、網を投げに川に行き、破れたら自分で直しつつ、大事に使いました。そうやって川漁に馴染んで行きました。

高校卒業後、高知市で就職し、10年間働いた後、地元に戻ってきました。帰ってきてまず川舟とトレーラーを購入し、漁協の組合員にもなりました。最初の2~3年は友釣りに熱中して、ありとあらゆる所に行きました。鮎がたくさんいたので、道具が安くても十分鮎が獲れました。

刺し網は大人になってから始めました。網は先輩に習って手作りしました。袋網では行けない所に行けるのでゲーム性があります。鮎の動きの見極めが大事で、のぼっていく鮎は獲るのが難しく、くだっていく鮎を狙います。多い時には1回に30~50匹も掛かります。錘は130~140個ほど付けますが、歳をとると、みんな100個くらいに減しますが、網も短くなるので、投げた時に広がらず、難しいです。

四万十川での怖い思い出

広見川と四万十川の合流点から白岩まで泳げたら一人前なのですが、チャレンジをして、怖い想いをしました。先輩のアドバイスは、「絶対戻ろうとするな。下流に行くつもりで斜めに流されて行け」というものでした。川では慌てず、パニックにならない事が大事です。

その他には、子供の頃、ウナギの穴釣りをしていて、天気が急変して、雷に打たれそうになった事です。大きな木の下に避難していましたが、毛が逆立つほど近くに落ちました。直撃する寸前でした。雷が鳴り出したら、無理をせず直ぐ避難しましょう。

取材を終えて…

財団の中では「のりさん」でお馴染みです。のりさんと言えば、大人塾の網投げ講師。昨年、私(中平)ものりさんに教わった塾生の一人です。大人になって、川との関係が遠く薄くなっていましたが、網投げするようになって、川の状態や鮎の魚影、跳ねる様子がいつも気になるようになりました。そしてチャンスがあれば、網を投げに行っています。食べるのも大好きです。

そんな川とのつながりは、人生をとても豊かにしてくれています。のりさん、ありがとう!これからも人と川をつなげていきましょう!