全国文化的景観地区連絡協議会の全国大会が北海道は平取町にて開催されました。平取町は、沙流川流域周辺に残るアイヌ文化の痕跡を今にとどめていること、また開拓期以降の農林業の土地利用が、アイヌの土地利用を活かして展開されていることがわかるという点が評価され、「アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観」として平成19年に選定を受けています。24日の大会初日は二風谷コタン内にある沙流川歴史館にて、平取町の文化的景観に関する基調講演と、各自治体の事例発表、アイヌ文化の発表がありました。

基調講演では、北海道大学の西山先生から、選定からこれまでの歩みを振り返りながら、アイヌが作り上げてきた景観の構成を説明していただき、沙流川を中心に、いくつものイウォロ(生活の範囲)が形成され、そこにチセ(住居)や信仰の対象となる自然地形が広がっていたこと、平取町は山から川までのイウォロの土地利用がわかる北海道でも貴重なエリアであるとの指摘がありました。また、現在はイウォロを中心に価値を再整理し、四次選定に向けて調整を進めているとのことでした。

事例発表では、平取町で活動するアイヌ文化保存会から発表があり、記録、行為(儀式・食文化の継承)、場(植物園など)による保全活動によって、アイヌ文化の継承を行っているとのことでした。記録の活動としては、アイヌ語の地名をデータベース化したり、行為による保全では、アイヌが行ってきたさまざまな儀式の継承を、場による保全としてはビジターセンターでの展示や川や植物など自然環境の保全活動も行っており、活動は多岐にわたるようでした。また保存会は踊り部会、食文化部会、生活儀礼部会の3つの部会に分かれており、アイヌの食文化に欠かせない山菜等の保全や調理法の継承、小学校でのアイヌ語講座などさまざまな取り組みを行っているとのことでした。会員は100名ほどおり、今後も息の長い活動が続いていく団体だと感じました。

事例発表以降は、アイヌ文化継承の取り組みとして、平取小学校でのアイヌ文化を学ぶ・体験する教育について紹介され、また子どもたちによるアイヌ語バージョンの「森のくまさん」と校歌が披露されました。小学校ではアイヌ語を学ぶ学習の他にアットゥシ(オヒョウの皮の繊維で作る織物)織を体験する授業なども実施しているそうです。歌声を披露してくれた子どもたちも流ちょうなアイヌ語で、アイヌ文化に誇りを持っていることが伝わってきました。続いて保存会によるアイヌの歌や踊り、祈りの演舞を鑑賞し、1日目の大会を終えました。はじめてアイヌの踊りを拝見しましたが、神々への感謝の気持ちを表現したものや、身近な動植物を表現した踊りが多く、自然から恵みを得てその感謝を忘れないアイヌの人々の考え方を感じることができ、貴重な体験となりました。

また、お昼休憩にはアイヌの伝統料理が入ったお弁当をいただきました。シプシケプメシ(いなきびご飯)やトゥレプシト(オオウバユリの団子)など、アイヌの食文化を味わうことができ、どれもとてもおいしかったです。お昼を食べた後は、空いた時間に二風谷コタン内にある二風谷アイヌ文化博物館を見学。アイヌの伝統衣装や、生活道具、儀式に使われる道具など、さまざまな資料が展示されていました。なかにはサケの皮で作った靴も展示されており、自然から得た恵みを余すことなく使うことで感謝を示すアイヌの人々の考え方に触れることが出来たと思います。また敷地内にある工芸館では、アットゥシなどのアイヌの工芸品を購入することが出来ます。行かれた際にはぜひ立ち寄ってみてください。

2日目はアイヌの人々の自然との向き合い方、考え方をより深く理解できるよう、信仰の対象となっている地を巡るツアーに参加します。