四万十川流域文化的景観連絡協議会(通称:文景協)では、文化的景観を地域内外の多くの人に知ってもらう普及啓発事業に取り組んでいます。今回は梼原町の集落を散策しながら梼原の暮らしを読み解くワークショップを行いました。
舞台は、梼原中心部から梼原川沿いに6㎞ほど下った川井集落。緩傾斜地に石積みで段々の平地を作り、そこに農地や家を構える、上流域らしい土地利用が見られる集落です。今回は、文化的景観の視点を活かした観光商品づくりという狙いから、町内でツアーガイド、観光協会、町内の歴史・文化財に詳しい方にご参加いただきました。
まず向かったのは農家民宿「ゆうちゃん家」。ここで、川井集落のドローン映像を見ながら、集落の特徴をみんなで確認します。進行・説明は、梼原町教育委員会の森山さん。この集落では、家の周りで畑を作り、背山を焼き畑に、さらに山の高いところでは林業をし、尾根付近では茅を育てるといった、複業型生業を営んできた歴史があり、その各家ごとのコンパクトな土地利用のユニットがみられるのが特徴なのだという説明がありました。ドローン映像で確認すると、山の上のほうまで農地が作られており、土地をいかに有効活用するかを思案してきた人々の努力がうかがえます。おかみの優子さんによると、川井の人たちは昔から「あそこがあれをしはじめたみたいだから、うちはこれをやろう!」といったようにお互いに切磋琢磨しながら暮らしてきたそうで、だからこそ山の上まで田んぼがある、そんな川井らしい風景を作れたのではないかと思います。また、お話を聞きながら、集落の特産品である「桜プリン」をいただきました。地域を元気にしようと、数年前から集落の桜を使ってジャムやスイーツづくりに取り組む「桜club」さんの商品で、現在は県外・海外でも販売されるほど人気なのだそう。卵不使用で、お米を使っているのが特徴のプリンは、桜の香りがとてもよく、お米の触感も楽しい、とてもおいしいプリンでした。
してくれました。
説明を聞いた後は、実際に川井集落を散策。森山さんが4つの視点場で説明を行いながら、景観から集落の暮らしを読み解いていきました。視点場からは段々の石積みで農地を整備していること、道路脇などの僅かなスペースも家庭菜園に利用しているなど、傾斜地でうまく平地を作り、少ない平地を最大限に利用した川井の人々の暮らしを見ることができました。また参加者が梼原の暮らしや歴史に詳しいこともあり、農地と住居の石積みの違い、かつての集落道についての説明など、逆にガイドをしてくれていたのが印象的でした。普段は梼原の街中を巡るツアーが多いと思いますが、今回のように、集落をのんびり散策しながら、風景を読み解く面白さを感じてもらえるツアーもアリなのではないかと思います。ガイドの内容もさすがだったので、すぐにでもメニュー化できそうだなと感じました。
また、今回は四万十川流域の文化的景観の特徴を簡単にまとめたリーフレットを参加者に配布しました。これを持ち帰ってもらうことで、文化的景観に対する理解や周知につなげたいと考えています。今回渡したものは試作品なので、年度末に向けて、内容をブラッシュアップしていきたいです。
今回集落を歩くことで、車で通りすぎるだけでは気づかなかった、段々の石積みの景色や、かつての主要な集落道など、川井集落の暮らしが表れている素敵な風景に出会うことができました。これらの風景は、ガイドさんがいないとなんでもない風景ですが、どういう意図で作られているのか、暮らしとのつながりがわかった途端、とても面白く感じられることを改めて実感しました。流域には面白い素材がたくさんあると思うので、今回のワークショップを応用して、各地で展開できればいいなと思います。