4~5月に四万十川と広見川の合流地点に出現するツートンカラー。これは、田植え前に行われる耕耘作業で発生した濁り水が圃場から流れ出る事で起こる現象です。この問題について定期的に意見交換会が開催され、高知県からは四万十市の各担当課、県自然共生課が参加し、愛媛県からは、宇和島市、鬼北町、松野町の各担当課、愛媛県南予地方局、JAえひめ南の皆さんが参加しました。

愛媛県側の取り組み

まずは愛媛の取り組みが報告されました。愛媛では、各農業者が石膏資材を代掻き時に圃場へ散布し、濁水を軽減する取り組みが行われています。3.3haで行われ、そこで穫れたお米の2~3割が濁水対策米として道の駅などで販売され、完売との事でした。

また労力削減のため、ドローンを使った石膏資材の散布実験が行われました。労力は最小となる代わりに、10aあたり資材代3,000円に加えて散布代3,000円の経費が嵩むことがネックとのこと。濁水対策のためにこれだけの負担を農業者に負わせることが難しく、収量や食味の向上、肥効のある資材も検討しているとのことでした。

また代掻き時期に数回実施している濁水パトロールの調査結果も共有してもらいました。21地点で水を採取し、濁度計による濁度調査を行っています。数値が小さいほど濁っている事になります。

濁度計による濁度調査

令和7年度は、濁水対策米のさらなる拡大や、新たな石膏資材の比較検討や、取り組みの認知度向上のために実証圃場への旗の設置などを計画しているそうです。

高知県側の取り組み

高知県でも定期濁度調査が実施されており、広見川の4月の濁度は平成31年の12.5から比べると令和6年は6.8に改善されていると報告されました。

また高知県でも令和5年度に続いて石膏資材の実証実験を実施し、一定の凝集効果があったとのこと。来年度以降も調査を継続しデータを蓄積していくことが必要だと報告しました。その他、希望者に対して圃場の排水口に設置する止水板を配布したり、防災無線で浅水代搔きや漏水や落水の防止を呼び掛けている事が報告されました。

まとめ

今回、財団1年目のスタッフ中平が参加しました。私自身も米を作っていますし、山林に作業道も作設しており、自分自身の行為で小さな谷が濁る事があり、この問題、他人事ではありません。

私事で恐縮ですが、代掻き時は極浅水で行い、直後でも田植え可能な固さなら、そのまま田植えをしています。これを「浅水代掻き田植え」とでも名付けましょうか。通常の深水代掻きだと、土が落ち着いて、田植え可能な固さになるのに2~3日かかり、その後、田植え可能な深さまで落水して、また水を貯める必要があります。「浅水代掻き田植え」をする事によって、濁水も減りますし、均平しやすいですし、浮き藁などの残渣も土中へ練り込めますし、直後に田植え出来る事から、かなりの時短と節水効果があり、良いことづくめです。農業濁水に関しては合理性を追求することで、改善の余地があるのではないかと感じました。

行政区分の壁を越え、流域思考で手を取り合い協力していく事が重要だと思います。今後もこの問題解決に向けた取り組みに注視していきます。