津野山古式神楽は、津野町(旧東津野村)で受け継がれている伝統芸能で、延喜13年(913年)に藤原経高によって伝えられたとされ、毎年11月、各集落の神社で五穀豊穣を感謝し祈願する神楽を奉納しています。今年は神楽が伝わって1111年という節目の年ということで、津野山古式神楽保存会が中心になって、神楽とJAZZという異なる芸術が融合したイベントが開催されました。


イベントには町内外から280名以上もの観客が集まり、立ち見の方も出るほどの大盛況。また会場内には地元の婦人部の方による飲食の物販もあり、カレーや唐揚げ、ビールなど、音楽を楽しみながら食事も楽しめるようになっていました。ビールを片手にジャズなんて、なんかちょっとおしゃれですね。
今回のイベントでは、ジャズに加えて、馬頭琴の演奏、そして神楽の演舞とジャズのコラボが披露されました。ジャズ演奏では、東京や大阪で活躍する6人のジャズ奏者たちが熱のこもった楽曲を披露。それぞれの楽器が曲中にソロで演奏しながら、技の見せ合いをしている感じがとても楽しかったですし、演奏している本人もセッションを楽しんでいるのが伝わってきました。会場内の人たちも手拍子をしたり、肩を揺らしたり、音楽に酔いしれているようでした。普段、生のジャズ演奏を聴ける機会はなかなかないので、とても貴重な体験でした。


また、いの町在住の馬頭琴奏者の方が馬頭琴の演奏とホーミーを披露してくださいました。ホーミーはモンゴルの伝統的な発声法で、1000人に1人しかできないとも言われる、習得がとても難しい発声法なんだそうです。2つの音が聞こえる不思議な声で、とても人間から出ているとは思えない、そんな感覚でとても貴重な体験でした。
そして、イベントの目玉である神楽とジャズのコラボでは、「恵比寿」の演目が披露されました。恵比寿とは、七福神で有名な釣竿を担いだ恵比寿様が観客に向けて竿をたらし、観客がお金を括り付けて引っ張り合いっこをする、観客参加型の演目です。観客とやり取りをしている間の楽も耳に残るリズムで、たくさんの人が手拍子をして音楽を作り上げているような、一体感が感じられる人気の演目です。今回は、楽は全て女性がつとめ、それも初めての試みとのことでした。楽の力強い太鼓の音や笛の音と、ジャズのトランペットやサックスの音が絶妙にマッチして、ちょっとおしゃれな雰囲気が面白かったです。




この日は町外からもたくさんの方が来ていたので、津野山古式神楽を知ってもらうきっかけになったのではないかと思います。神楽というと、伝統的で、どこか地域にクローズされているものというイメージがありますが、神楽を身近に感じてもらえる、とてもいい取り組みだと感じました。また、地元の方も本当にこのイベントを楽しみにしていたんだなということが伝わってきたので、ぜひ今後も継続していってほしいですね。関係者の皆さま、本当に素敵な時間をありがとうございました。