四万十川水系源流部ではかつて焼畑が一般的に行なわれており、キビ(トウモロコシ)を主軸とした雑穀による食生活でした。中下流域でも白米が主食となったのは戦後ですが、豊富な川の幸が時期に応じた様々な調理法で食卓を賑わしました。

伝統料理

四万十川流域の伝統食も上流部の山間地と中下流域では大きく異なります。四万十川上流の村々は山が深く焼畑が農業の中心であったため、キビ(トウモロコシ)・ソバ・コキビ・クキイモ(里芋)などが重要な食物となっていました。主食は冬から夏の始めまでがキビ8~9割に米1~2割のキビメシで、夏から秋は麦飯、冬の夜はキビ雑炊やソバ雑炊を食べることが多かったと伝えられています。中下流域では川の幸であるアユ・イダ・ハヤ・ウナギ・エビ・カニなどが食膳を賑わしましたが、基本食は水田から穫れる僅かばかりの米と、裏作の小麦、畑のハダカ麦・サツマイモ・大豆・小豆・ソバでした。また川漁のない厳寒期のために魚の焼魚・塩干し・塩漬などの保存食もつくられました。

酒蔵

四万十川流域周辺の市町村には中土佐町(久礼:西岡酒造)、四万十町(窪川:文本酒造 大正:無手無冠)、四万十市(藤娘酒造)に、計4軒の酒蔵があります。各々の酒蔵ではいずれも四万十川水系の水を用いそれぞれ特徴ある酒を醸していますが、味は土佐酒の特徴である「淡麗辛口」が主流となっています。また旧大正町の無手無冠では特産品であるクリを使った焼酎も生産しており、全国でも珍しい栗焼酎として珍重されています。

川の幸を使った伝統料理

【アユせごし】
腸・うろこ・粘りを取り薄塩をあてるなど下拵えした6月頃の若鮎を頭から細切りにしたもので、二杯酢で食べます。新鮮な鮎でないとできない料理。
【アユ甘露煮】
砂糖・醤油・酢・生姜などで作った煮汁に白焼したアユを入れ煮つめて作ります。落ちアユも用います。
【アユ塩焼き】
アユに串を刺し塩を振り炭火の遠火でゆっくりと焼きます。鮮度が大切で穫れたてを河原で焼くのが一番。
【アユめし】
内臓を出したアユを米にのせ、炊飯した後骨を抜いてご飯と混ぜ合わせます。炊飯前に酒・醤油を、混ぜ合わせる時に下味をつけた野菜類を入れます
【アユ寿司】
背割りにしたアユを塩水と酢につけ、寿司飯を詰めたもの。セイソウを挟んだり山葵をアユの裏にぬりつけたりもします。
【アユ塩辛】
ヒレとエラだけを除いたアユを細かく切り、塩をなじませて容器に入れ密封します。3日に1度位かきまぜると味がなじみ、長期保存可。
【ヤマトテナガエビとキュウリの煮付け】
エビとキュウリは出合い物で、甘辛く味付けたエビの鍋にキュウリを入れ少し固い目で火を止めます。
【ヤマトテナガエビの空揚げ】
口先を切り取ったエビにカタクリ粉をまぶし中温でカラッと揚げ、熱いうちに塩を振ります。
【ウナギのタタキ】
捌いたウナギに塩をまぶし身をしめてから両面を焼き、冷水に入れ塩分を落とします。冷凍室で身を硬くしてから切り分け、晒玉ねぎと一緒にタレで食します。
【アオノリの天ぷら】
アオノリの片面にさっくりとした衣を付け、適温の油で揚げます。
【ヤマトテナガエビの煮付け】
洗ったエビを鍋に入れ砂糖と醤油で味付けしたもの。5月ごろの脱皮したばかりの柔らかいエビが好まれます。
【ツガニ汁】
鍋に沸かした湯の中で、甲羅とふんどしを外しミキサーで砕いたカニを濾します。アク抜きしたナス・キュウリを汁に入れ、醤油で味を整えます。
【ゴリのつくだ煮】
塩まぶしして1時間置き水洗いしたゴリを、みりん・醤油・砂糖を沸かした中に入れ、一度沸かした後弱火で1時間程度炊きます。
【ゴリの玉子とじ】
塩まぶしして2~3時間置き水洗いしたゴリを、ゆでた丸干し大根と共に水に入れ、煮立ったら砂糖・醤油で味付けし、味が染みたら玉子とじにします。
【ウナギ茶漬】
ウナギの骨のスープに白焼したウナギと酒・醤油・砂糖・水アメ・ハチミツ等の調味料を入れ煮ます。ご飯にウナギをのせ、煮汁と熱い茶をかけて食します。
【コイの子もぶり】
塩水でゆがいたコイの卵を水切りした後、醤油・ザラメなどで甘目に煮詰め、糸造りにしたコイの身にまぶして食べます。
【コイこく】
コイは塩もみした後、胆のうだけを取って筒切りします。水・酒・醤油・白味噌で薄味を付けた後、さらに水と味噌をとき入れ弱火で煮込みます。
【アオノリのつくだ煮】
乾燥したアオノリを水で柔らかくなるまで戻し、醤油・味醂・砂糖で気長く火にかけ好みの柔らかさでおろします。

保存