シロシャクジョウ

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森の中の落ち葉の影から頭を覗かせる、白いマッチ棒のようなシロシャクジョウ。薄暗い林の中では見つけるのが難しい、身の丈5~10cm程度の小さな小さな植物です。その姿が僧侶や修験者が手に持つ錫杖=シャクジョウ(環の付いた杖)に似ていることからその名前がついたと言われ、小さいながらりんと立つその表情は、あたかも林の中の小さな妖精といったところです。
シロシャクジョウはヒナノシャクジョウ科ヒナノシャクジョウ属。学名をBurmannia cryptopetalaといい、緑葉を持たず白色の腐生植物(*注)で、湿った暗い林下に生えています。
本州(近畿)、四国、九州、沖縄に確認されていますが、近年では確実に減少傾向にあり、高知県でも絶滅危惧IA種(ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種)に指定されています。減少の原因の一つとして、もともと自生地が限られている植物にもかかわらず、自然林の伐採が進むにつれ、確実にその生息場所を失いつつあることがあげられます。
今回シロシャクジョウが確認された場所は、まだまだ自然林が残る四万十川流域のポイント。この小さな『森の妖精』がずっとここで生きていけるように、その環境が守られていくことを願いたいと思います。
(*注 腐生植物;種子植物のうちで、光合成で自活する能力が無く、菌類と共生して栄養分を得て生活するもの。)