四万十川流域では、流域5市町(津野町・梼原町・中土佐町・四万十町・四万十市)の教育委員会と高知県文化財課、それに私たち四万十川財団が一緒になって「四万十川流域文化的景観連絡協議会(長いので普段は「文景協」といいます)」という会を作り、情報共有や文化的景観を活かした連携事業を行っています。平成25年からの3年間は全国の大学から学生、大学院生を招いて流域の景観を学び、活かし方を考える『学生キャンプ』を行いました。その中で浮かび上がってきたのが「自分たち自身がもっと地元の景観について理解を深める必要がある」ということでした。それではということで、ここ2年間、各市町が順番で幹事となり現地研修を行うということをしています。
今日の午後は四万十町大正にて茅葺き屋根修復現場の視察研修会。四万十町がちょうど二件の茅葺き民家の修復をしているということで現場に出ました。
最後の仕上げ作業をしている職人さんに聞いてみました。
ー作業中スミマセン、ちょっと話し聞かせてもらっていいですか。この、切り揃えるのが最後の作業だと思うんですけど、「やっちゃったー!」って時あります?
「切り過ぎってことですか? ごくたまにですけど、ありますよ。そういうときは、これ ↓ で引っ張り出すんです。」
切り揃えては「ガンギ」とも「クワ」とも呼ぶ下の道具で叩いて均していきます。
ー 叩く時って、どのあたり見ながら叩いてます?
「一点じゃなくて、叩く周りをなんとなく全体的にですかね。」
ー その、平になったならないっていうのは、正面からでも目が慣れてくるもんですか?
「やっぱり慣れてきて正面からでも分かるようになりますね。でも、下からのぞき込んだりとか、横から見るとか、時々はチェックしながらやってますね。」
すごく真面目に受け答えしてくれながら、たんたんと作業をする若き職人さんでした。作業中お邪魔しました。
次に現場の責任者にお話を伺いました。大阪の業者さんですから、厳密に言えばこの地域の葺き方とは違っています。
「萱は河内長野と御殿場から持ってきています。」
ー それは品質の問題ですか?
「やはりきちんと管理した所の萱でないときれいに葺けません。長さの問題もあるし、曲がりの問題もある。何より、硬さ(コシ)が違う。」
ー この大きさでトータルで何人役くらいかかりましたか?
「だいたい150人役くらいですかね。私たちは3人でやっています。多ければいいというもんでもない。集落で葺き替えする場合にはみんなで上って一気にやるということもあるでしょうが、それだと揃わない。どうしても人によって葺き方の差が出てきてしまいます。有名な茅葺き集落の屋根をよく観察してもらえば分かると思います。私たちは仕事でやっているので、そこはきちんと仕上げなければならないんです。」
ー この、表に当たる面は差し替えでやってありますが、やっぱり手間はこちらの方がかかりますか?
「それは断然差し替えの方が手間がかかるし、持ちも違う。可能であれば全面葺き替えの方がいいですね。」
ー 作業で一番難しい部分は隅ですか?
「そうですね。それと天の部分。ここは必ず一番のベテランに任せます。隅はどうしても三角形に芯 (注:萱を紐で束ねた『芯』を設置して、そこに萱を差し込んでいくことで固定している) を入れることになるので、萱は扇形に開くことになる。ここをいかに綺麗に見せるかが腕の見せ所です。」
ー 竹は何時切ります?
「秋ですね。」
ー 竹や萱を切るときに犯土(つち)なんか気にしてます?
「本当はした方がいいんだろうけど、そこまではやっていません。」
ー 全国いろんな屋根を葺いてまわっておいでだと思いますが、ご覧になってこの家の特徴というか、他と少し違うようなところってありますか?
「ぱっと見ですけど、垂木が細いとおもいます。構造的にいってこの細さならもっと本数がいるかなと思う。」
ちなみに、四万十町の生涯学習課によると、前回修復したときに少し厚く葺いてもらった経緯があるそうです。
竹内家住宅を見学した後、せっかくなのですぐそばの郷土資料館に併設する「旧門脇家住宅」も見学しました。こちらも屋根の修復が終わったばかりです。
春の恒例行事となった四万十街道ひなまつりの飾り付けもされていました。
ということで、本日の研修も終了。文景協のみなさん、お疲れ様でした。四万十町生涯学習課のみなさん、お世話になりました。