四万十川の姿

「上流域の山村と棚田」梼原町

四万十川最大支流梼原川の源流域、梼原町は、町面積の90%以上を占める森林が地域の生業と深い関係を持ってきた。冬は南国ながらも数10㎝の積雪を見るなど、県下で最も寒く厳しい自然環境の中で、人々は古来、農・林産物の複合経営により主たる生業をたててきた。

山間地の代名詞のようなここでは、耕作に利用できる土地が限られていたため、町内の耕地の約7割を棚田が占めている。急峻な山肌に開かれた棚田は、堅牢な石垣に守られ幾層にも重なっていて、“水守”による厳しい水管理の下、合理的な水利システムによって維持されてきた。その町内に数ある棚田の中でも、特に勾配がきつく枚数も多い「神在居の千枚田」は、“棚田オーナー制度”発祥の地でもある。

また、町南部には、選定申出面積2,433ha余りの国有林が広がり、南部の主要な景観を構成している。ここは、かつては木材の搬出でにぎわったが、国有林の一部は伐採せず風景林や保護林として自然林のまま管理され、人工林と自然林とが稜線を織りなす独特の景観を構成している。

このように、梼原町の文化的景観は、厳しい自然の中で営まれた林業や、急峻、狭小な土地で営々と続いてきた棚田の耕作によって形成された山村の文化的景観である。
梼原町URL:http://www.town.yusuhara.kochi.jp/